2012年7月12日木曜日

第358話 ふぐの白子と天然うなぎ (その2)

墨田区・玉の井の「うを徳」に来ている。
昨日・今日のサブタイトルは「ふぐの白子と天然うなぎ」。
両方いただいちまったが、この稿はまだ終わらない。

うなぎがとっつかまった松江の宍道湖は何度か訪れた。
あの湖のほとりで陽射しを浴びたことはほとんどなく、
いつも小雨が降っていた。

♪ 静かな雨 並木の雨
  あなたを待つ 胸に降る
  流れる唄 なつかし唄
  夢をささやく あのメロディ ♪

コンチネンタル・タンゴとして生まれ、
のちにシャンソンにもなった「小雨降る径」よりも

♪ 雨はふるふる 城ヶ島の磯に 
  利休鼠の 雨がふる 
  雨は真珠か 夜明けの霧か 
  それともわたしの 忍び泣き ♪

北原白秋の「城ヶ島の雨」のほうがしっくりくる山陰の雨。
湖はいつもこぬか雨に霞んでいた。

うなぎの前のまながつお西京焼きあたりから
酒は芋焼酎のロックに切り替わっている。
その名も「うを徳」であった。

おもむろににぎりに移行する。
皮切りは大好物のキスだ。
江戸前随一の繊細さを誇るキス
にぎりのキスもくちづけのキスもやさしさが大切。

二番手はこれも必ず注文する小肌。
小肌はひかりモノの代表格
何たって光り輝くかすり模様が命だ。

三番手がさば。
さばも好きな部類だが酢との相性よろしきこのサカナは
江戸前よりも上方寿司に適していると思う。

四番手・五番手は貝の王者・赤貝だ。
べっこう飴を思わせる照り輝き
ヒモの柱はまさしく大黒柱

六番手はまぐろ赤身のヅケ。
キメこまやかな身肌が特徴

赤身はむろん、中とろも大とろもヅケのほうが好きだ。

七番手が茹で立ての車海老。
かき揚げは桜だが、にぎりは車だネ。
ナマで食うなら北海縞海老に如くはなし。

かんぴょう巻きの代わりに
どんこ椎茸を何日も掛けて煮〆たのをつまみに
お茶代わりのビールを飲んで締めとした。

この稿は金子由香利、菅原洋一&冴木杏奈、
寺内タケシとブルージーンズで「小雨降る径」。
藤山一郎、倍賞千恵子、チェット・アトキンスで
「城ヶ島の雨」をそれぞれ聴きながら書きました。

大好きな江利チエミの「城ヶ島の雨」が
youtubeで聴けなくなって哀しい。
山野楽器で探してみようか・・・。

「うを徳」
 東京都墨田区東向島4-24-26
 03-3613-1793