2017年9月29日金曜日

第1711話 京王線に乗って (その5)

カウンターを埋め尽くす客、客、客。
その景色を前に茫然と立ち尽くす自分がいた。
国分寺市・本町、「いながき」の店先である。
開店後、10分でこの有り様だったが
どうにか左側奥の1席に滑り込むことができた。
文字通り、滑り込みセーフ!

さて、この地の市名の由来はもちろん武蔵国分寺。
国分寺は日本全国津々浦々(北海道を除く)に
膨大な数が存在しており、
総国分寺は大仏さまで世に知られる奈良の東大寺だ。

その武蔵国分寺は一度も訪れたことはないが
ここ「いながき」は二度目である。
ホッと胸をなで下ろすひまもあらばこそ、さっそく訊かれた。
「お飲ものは?」
声の主は飲みもの&会計担当のオジさん。

ビールをお願いするとキリンラガーの大瓶が抜かれる。
まっ、仕っ方なかんべサ。
1本560円だから下町の大衆酒場並みといえる。
今宵はこれを2本ばかり飲むとしよう。
目の前にはプラスチックの青いザルにキャベツがこんもり。
無料サービスの突き出しは植物繊維とビタミンの補給源だ。

「焼きものは?」
此度はもう片方のオジさん。
「レバとシロ、それに鳥もつ」
「塩? タレ?」
「鳥もつが塩、あとはタレ」
すみやかに注文が通った。

鳥もつはおそらく鳥の横隔膜あたり。
クニュクニュ感が歯に心地よく大好きな部位である。
ところが当夜は食感がイマイチ。
じゅうぶんに美味しいけれど、前回ほどの滋味はない。
レバとシロもいま一つで下町酒場のレベルをやや下回る。
何かヘンだゾ、どこか違うなァ。
これが気のせいなんかじゃないと思いたい。

ビールのお替わりとともに、まくら&ピーマン。
まくらはつくねのニラ巻きでピーマンはそのままピーマン。
どちらも箸休め的役割を果たす。
まっ、こんなもんでしょうネ。

客の滞在時間はきわめて短く平均すれば20分くらいで
長居しているのは数えるほどだ。
18時近くになると空席が目立つようになってきた。
常連客に倣い、このあたりでお勘定。
締めて1850円也。

京王線沿線をめぐるつもりが
気まぐれでモノレールに乗ったもんだから
JR中央線で帰ることになった。
近々、あらためて調布に出張らねば!
無沙汰をずっとしている吉祥寺の街の灯りをながめながら
そう思ったことでした。

=おしまい=

「いながき」
 東京都国分寺市本町2-11-4
 042-323-5835