2018年8月20日月曜日

第1940話 匂いにおびき寄せられて (その2)

東上野の「晴々飯店」でジャスト・ハヴィング・ランチ。
界隈はかねてより、
オートバイ関連の店が軒を連ねる一画だったが
ここ数年、閉業が相次いで町の様相が一変した。

そのぶん、ビジネスホテルや
男性同士のカップル向けバーが増えている。
新宿2丁目あたりのオカマバーとは
趣きを異にするスタイルらしいが
利用したことがないので実状を知らない。
ただ、男のカップルといっても若者は皆無。
みな中高年以上と聞き及んでいる。

八宝菜ならぬ、十宝菜は塩味ではなく醤油仕立て。
通常の八宝菜はほとんどアッサリ味の塩系だろう。
それともあれは広東料理に限ったことで
四川・北京・上海と、ところ変われば品も変わるようだ。

ヒマに任せて皿中の具材を数えてみた。
海老、いか、豚バラ肉、きくらげ、ふくろ茸、
千本しめじ、白菜、にんじん、小松菜と、
これじゃ九宝菜じゃないかと思ったものの、
出て来た、出て来た、ホンのちょっぴり竹の子が―。
ようやく十宝菜と相成った。

十宝菜はリアル回鍋肉同様にちょいとしょっぱい。
きくらげ大好き人間の相方は相好を崩しつつ、
そのへんばかりをつついている。
ライスの量が日本の定食屋より多いのは
濃いめの味付けでガッツリ食べさせるためかもしれない。

次から次と来客は引きも切らない。
週末とあって近所のサラリーマンの姿はなく、
若いカップルが目立つ。
ってゆうか~、カップルかグループばかりだ。
さすがにそのスジの男性同士は現れなかった。

ほかに興味を惹かれた料理はパクチーロース。
このロースはロースハムや
ロースカツのロースじゃなくて肉糸だと思われる。
それに黄金豆腐。
写真を見ると土鍋仕立てで綺麗な黄色をしている。
何でも本場ではアヒルの卵黄を使うそうだ。
再訪したら必ず食べようと心に決めた。

普段あまり接しない味と香りに
味覚&嗅覚が反応したわれわれ二人。
満腹となったが当店には大きな欠陥あり。
注文した2皿には豚バラ肉が使用されている。
しかしながら、その肉自体がいただけない。
中国産の解凍モノと憶測される。
三元豚やアグー豚、はたまた東京Xのバラだったら
どんなに美味しい料理となっただろう?
日本人としてまことに残念なり。

「晴々飯店」
 東京都台東区上野7-8-16
 03-3842-8920