2019年6月12日水曜日

第2152話 焼いて食えるな ホロホロ鳥は (その1)

♪   花も嵐も 踏み越えて
  行くが男の 生きる道
  泣いてくれるな ほろほろ鳥よ
  月の比叡を 独り行く   ♪
   (作詞:西條八十)

霧島昇&ミス・コロンビアが歌った「旅の夜風」は
1938年9月のリリースで歌詞はその1番。
同年製作の松竹映画「愛染かつら」の主題歌として
日本全国津々浦々に流れ、空前の大ヒットとなった。

この数ヶ月前、拡大した日中戦争を理由に
東京五輪の開催権が返上されている。
世界大戦前夜の欧州諸国も
オリンピックどころではない状況下にあった。

歌詞にある、ほろほろ鳥(どり)とは
いったい何者であろうか?
アフリカ原産(ギニア地方)の
ホロホロチョウ(英名ギニーファウル)ではあるまい。

調べてみたらヤマドリだった。
あまり鳴かない鳥で
オスによる求愛は羽根をバタバタさせるドラミング。
このドラミングをほろ打ちと呼ぶそうな。

写真で見るヤマドリはキジとニワトリのハーフの如し。
恋愛映画の主題歌には
およそ似つかわしくない姿カタチをしており、
違和感がつきまとう。

ここで、とある曲に思いがいたった。
エッ? またかヨ!
なんて気色(けしき)ばまずにご覧下され。

♪   ひとりの旅の 淋しさは
  知っていたのさ 初めから
  はぐれ小鳩か 白樺の
  梢に一羽 ほろほろと
  泣いて涙で 誰を呼ぶ  ♪
   (作詞:宮川哲夫)

1960年に発表された、
松島アキラが歌う「湖愁」の2番だ。

これなら胸にストンと落ちるじゃないか。
役者にしたって山鳥より、
はぐれ小鳩のほうがよほどいい。
哀愁をたたえて美しい。
あ~、スッキリした。

=つづく=