2019年6月20日木曜日

第2158話 水鳥のあと 濁すモノあり

東京の東、江戸川の向こうで所用を終え、
帰って来たのは京成上野駅。
陽は西に傾いて絶好の晩酌どきであった。
ただし、この日は予定があって早めに帰宅せねばならない。

さァ、どこへ行こうか?
手っ取り早く、目の前の広小路、いや、湯島界隈にするか―。
と、思いながら向かったのは弁財天方面。
そう、不忍池だった。

せっかくだから飲み出す前に池畔を歩こう。
短い天龍橋を渡らず、
したがって弁天さまにお参りもせず、
緑の蓮に埋めつくされた蓮池のほとりを歩む。

不忍池は3つに分かれており、
北から鵜の池、ボート池、蓮池となる。
なじみ深いのはボート池。
障害物がなく、見晴らしがよいためだ。
鵜の池は動物園に入園しないと、池畔を歩くことができない。

蓮池をグルリめぐってボート池にやって来た。
池を臨むベンチには幸せそうなカップル、
孤独な老人、一憩する外国人旅行者など、さまざまな人々。
それぞれに、笑顔で語らい、深くうつむき、
ひたすら水面を見つめている。

このときJ.C.が探しもとめていたのは水鳥の姿。
ところが、みな北に帰ってしまい、
常駐しているハズのカルガモすら見当たらない。
代わりにバカデカい白鳥が群れてるじゃないか―。

それもけばけばしいピンクのヤツがネ。
そう、ペダルで漕ぐタイプのスワンボートである。
景観を損なうことはなはだしく、
水鳥去りしあとの池を濁らせているのだ。

ふと気がつくと、手漕ぎのボートが皆無。
動物園のせいで子どもたちが集まる一帯だから
家族連れは仕方ないとしても恋人同士でスワンはないやろ。
いい若いモンがペダルをペタペタ踏んでるようじゃ、
この国の未来は暗いネ。
スマフォばっかりやって本を読まない、
こういう連中がアホ政権、もとい、
安倍政権を支えてるんだから国の未来は真っ暗だネ。

上野のボート池なら、あざ笑って済ませることもできよう。
これを九段の千鳥ヶ淵でやったら世も末。
おそれおおくも天皇陛下、上皇さまはお許しになるまい。
世の若い男たちよ、ボートは手で漕ぎなさい!
そして若い娘たちよ、
恋人乗せてボートも漕げない男とは即刻、別れなさい!