2024年9月13日金曜日

第3623話 鳥越の 天丼哀し 夏の空

千貫神輿で名を馳せる台東区・鳥越の鳥越神社。
以前、暮した柳橋にほど近く、
おかず横丁の存在もあって庭みたいなもの。
此処に和食の老舗「大新」がある。
何度も店先を通っているが
敷居をまたいでないため、出掛けてみた。

天ぷら・刺身・うなぎに
海老フライ・とんかつが主なランチメニュー。
夜はふぐ料理などを供し、宴会もこなす。
昭和の時代の浅草辺りでよく見かけた、
典型的な総合和食店である。

ビールはキリンのみ。
しかも重々しいクラシックラガー。
背に腹は代えられずガマンの発注に及ぶ。
日替わり弁当が売切れており、
豚ぷら定食と迷った末、天丼を通す。
運ばれたドンブリをひと目見て
表情の曇りを実感する。

細海老3本・キス・イカ・
しいたけ・なす・いんげん。
魚介類が見るからに力を失い、ヘタッている。
オマケに大の苦手の古糠漬け。
あさり&小海老入り八宝菜風と
ほうれん草味噌汁は好かった。

夢破れて山河あり。
障子破れてサンがあり。
空を見上げると浮雲がぽっかり
ほうら陽水も歌い出す。
浪花の小姑が何か言ってきそうだけど
ええい、イッちゃえ!

♪     何かを大切に していたいけど
  身体でもないし 心でもない
  きらめくような 想い出でもない
  ましては我が身の 明日でもない
  浮雲、ぽっかり  
  浮雲、ひとりきり  ♪

「青空、ひとりきり」は1976年リリースの
アルバム「招待状のないショー」に
収録されている。
ん? 最近もこの曲使ったな。
まっ、いいか。

涼風(すずかぜ)未だ吹きやらぬ夏空の下、
すぐ近くの鳥越神社に参拝。
境内に足を踏み入れるといつも思い出すのは
浅田次郎の「天切り松 闇がたり」。

第二巻の「残侠」では清水の小政が此処で
得意の居合抜きをフル回転。
並みいる敵をバッタバッタとなぎ倒す。
痛快な当シリーズは彼の作品中、
揺るがぬマイベストであります。

「大新」
 東京都台東区鳥越2-1-4
 03-3862-0035