2024年12月31日火曜日

第3700話 年の瀬の雷門で金龍山

正月の浅草は大変な賑わいになる。
J.C.も若い頃は毎年1月2日、
観音さまに手を合わせ、
寅さん映画を観たあとに
西浅草の「みよし」で
イカの活け造りを楽しんだ。

その習慣がパッタリ途絶え、
今は正月じゃなく歳末に訪れる。
此の街は年の初めより、
終わりのほうがシックリくるんだ。

浅草寿町行きバスを西浅草三丁目下車。
言問通りで外人カップルに道を訊かれた。
丁寧に対応したあと、
「何処カラ来タノ?」
「オーストラリアデス」
「オーストラリアノ何処?」
「メルボルン」

思い出すのは2017年4月。
雷門通り「酒富士」で隣りに座った娘だ。
オーストラリア・ブリスベン出身のブリは
長野・白馬のホテルのフロント係だが
里帰りのため、翌日には成田を発つ手はず。
かつ丼を食べる彼女に
酒を飲ませたり、鯨を食わせたりした。
あの明るい笑顔が今もよみがえる。

せっかくだから久しぶりに
思い出の「酒富士」へ行ってみようかー。
そう言やあ、何度も行ってるのに
かつ丼は食べてないなァ。

カウンターに着き、ドライ大瓶と
かつ丼だと重いので、かつ煮を通した。
飯のないぶん味が濃くなるけど
さすがに店の人気メニューだ、いい感じ。
肉自体は薄めながら脂身の付き具合が好い。

品書きの菊正宗の隣りに樽酒があった。
「樽酒も菊正ですか?」ー若女将に訊ねると
「いいえ、こちらなんです」
一升瓶には金龍山とあった。
吉野杉の樽に仕込まれた奈良の酒だ。

いつも飲み慣れてるせいか、
家に常備の菊正のほうが好みかな?
さりとて金龍山は浅草寺の山号。
年の瀬に雷門で金龍山に出逢ったのも
何かの因縁でありましょう。

おかげ様をもちまして
当コラムも今話でちょうど3700回。
日々のご愛読にあらためて感謝いたします。

明日からは巳年。
なるったけ蛇(ヘビ)ーな難題を避け、
御巳大切になさって下さいまし。
どちらさんも、よりよいお年を!

「酒富士」
 東京都台東区浅草1-6-1
 03-3843-1122