2013年2月22日金曜日

第519話 ジュリーとはばたく東京の空 (その3)

自分の好きなジャンルとなると、
なかなか終われないのが当ブログのいけないところ。
いまだに沢田研二&菅原文太の「太陽を盗む男」を引きずっている。

1979年度の「キネマ旬報」日本映画部門において
第2位に選出されたことはすでに述べたが
2009年度の「キネ旬オールタイムベスト映画遺産200」では
第7位にランクされているのが何たってスゴい。
ちなみにベストスリーは

 ① 東京物語
 ② 七人の侍
 ③ 浮雲

スタッフもキャストも充実しており、脚本は世界でただ一人、
日本語と英語で脚本が書ける男、レナード・シュレーダー。
助監督には翌年(1980年)、
「翔んだカップル」で監督デビューし、そのまた翌年には
「セーラー服と機関銃」を発表した相米慎二の名前もみえる。

井上堯之の音楽がまたすばらしい。
取り戻した原爆を乗せて
夜明けの首都高を失踪するジュリーのサバンナRX-7。
それを追いかける文太のコスモAP。
初代のコスモ・スポーツとは似ても似つかぬコスモAPが大活躍だ。
クルマにうるさい方なら
映画のスポンサーがマツダということは一目瞭然ですネ。

鳥瞰するカーチェースが快感を呼び、
観客は東京の空を飛んでいるかのよう・・・。
空撮シーンにかぶさって流れる音楽が
1960~70年代のヨーロッパ映画を彷彿とさせる。
自らもカーキチの井上には楽しいシゴトであったろう。

主役の二人以外のキャスティングもしゃれていた。
怪優・伊藤雄之助扮する意味不明のバスジャック犯がインプレッシヴ。
数日前、ひかりTVで長谷川一夫の「雪の渡り鳥」を観ていたら
伊藤の実兄の澤村宗之助が出てきて懐かしかった。
とは言っても兄弟揃って恐ろしい面貌の持ち主だから
子どもの頃は悪役専門の澤村が現れると身が縮む思いだったがネ。

見落とせないのは、ともにチョイ役ながら水谷豊と西田敏行。
水谷は派出所の巡査役でボケ老人に変装したジュリーに
催眠スプレーを吹きつけられ、短銃を奪われてしまう。
一方の西田はサラ金の取立て役。
追いかけっこするのは神宮球場の回廊だろうか?
ジュリーとの絡みがバツのグンだ。
ハマちゃんは上手い、実に上手い。
この人の持つ天性のおかしみはやはり天が与えたものだ。

とにもかくにも見どころ満載の「太陽を盗んだ男」。
興行的には振るわなかったが年を追うごとに評価は高まっている。
こんな映画を撮れる監督はもうこの国にはおらんのかネ?
ずいぶんこまかいとこまで書いちゃったが
ポイントとなるスジは外したつもり。
読者にはぜひ観てほしい1本であります。
長谷川監督、ありがとう!

=おしまい=