2013年2月28日木曜日

第523話 夕陽とうなぎを追いかけて (その3)

南房総、というよりも房総半島の突端に近い、
館山の由緒あるうなぎ店「新松」にいる。
江戸末期の創業は当代が五代目という。
とにかくデカい鉢の酢の物を前に途方にくれているのだ。
1200円も取るんだからハーフサイズを用意しておくれでないかい?

昨日の写真ではその大きさがつかみにくいので、もう1枚。
小さめのおろし板に中サイズの生わさび
鮫皮の板とわさびは持参した。
両者はいつも同行してくれる頼もしいわが旅の友だ。

酢の物の内容は
このしろ・たこ・子墨いか・赤貝・海老・わかめ・みょうが・きゅうり。
出世魚の小肌は新子・小肌・なかずみ・このしろと、
成長とともにその名を変える。
ご覧のように大柄なかすり模様はもはや小肌ではなく巨肌である。
大味なものもあったけれど、本わさびが功を奏してなんとか完食。
しかし、こりゃニセわさびじゃ食えやせんぜ。

品書きをちょいと紹介しておこう。

鰻献立
 イ・並うな重(中串)             2500円
 ロ・特上うな重(大串)            3000円
 ハ・超特上うな重(御飯の間にも鰻入)  3500円

おつまみ各種
 肝焼き(2本) 900円  うざく 1300円  う巻き 1500円
 お刺身・天麩羅 各1680円  たこブツ 700円  

ほかに冬季限定のこんなのがあった。
味噌仕立ての鍋は2人前で5000円 

注文したのはうな重の並。
うなぎは鹿児島産
蒸しが浅く、歯応えを残している。
フワフワでとろけるタイプよりずっと好きだ。
肝吸いには三つ葉・しいたけ・竹の子が。
新香はきゅうり・白菜・たくあんの三種盛りである。

それなりの満足感を胸に再び夜道を駅へ。
街を見て回ることもせず、内房線の上り列車に乗り込む。
旅の主要な目的は東京湾の夕陽だから、これはこれでよしとしよう。
しかしながら、このまま東京へトンボがえりするJ.C.ではない。

へへっ、降車したのは千葉駅でありました。
目星をつけておいた「スタミナ呑」に直行する。
ところが目印となる動物病院がなかなか見つからない。
仕方なく電話を入れると、店の女性が迎えに出てくれた。
訊けば、病院は廃業したとのこと、道理で。

焼肉屋みたいなへんてこりんな店名ながら、ここは居酒屋である。
のどが渇いており、いきなりレモン・山いちご・黒糖梅酒のサワー三連発。
つまみは厚揚げの焼いたのと焼きとんのレバをタレで2本。
「新松」では肝焼きを食べなかったから補給した恰好になった。
するとこのレバが旨い、レアじゃないのに旨い。

切盛りするのは親父さんと先ほどの女性だが二人は夫婦ではない様子。
言葉遣いに遠慮があるものの、互いに親しみを感じているようでもあり、
将来の女将さん候補といったところかな? まっ、野暮な詮索はよしとこう。
1時間少々の滞在で支払額は1930円。
夕陽とうなぎを追いかけた日帰りの旅に
サワーと焼きとんのオマケがついて、ヨは満足至極じゃ。

=おしまい=

「新松」
 千葉県館山市北条1561-3
 0470-22-0472

「スタミナ呑」
 千葉県千葉市中央区登戸1-7-14
 043-247-5914