2012年3月13日火曜日

第271話 酩酊度を検証に再び (その2)

記憶がおぼろげになるほど酩酊したのに
傍目にはそれほどヒドく映らなかったようで何より。
まっ、天保の剣客、平手造酒に倣えば、

 酔いどれ果ててもJ.C.は酒呑みじゃ
 男の呑み方だけは知っており申す

ということであろう。
いや、あんまり自信はなかったんですけどネ、テヘッ。

大塚をあとにしたわれわれは
都営荒川線のチンチン電車に
つかのま揺られて庚申塚へとやって来た。
庚申塚(庚申塔)や庚申信仰に興味のある方は
ググッてみてください、なかなか面白いですよ。

俗称お婆ちゃんの原宿、
とげぬき地蔵で有名な巣鴨地蔵通り商店街のはずれまで
足をのばしたのにはワケがあった。
狙いに定めし1軒が庚申塚駅のすぐそばにあり、
その名もモロに「庚申酒場」という。

お見受けしたところ、齢八十にならんとする女将サンが
たった一人で切盛りするひなびた酒場。
隅田の水から遠く離れた豊島区に
いわゆる下町でもない巣鴨の町に
よくもまあ、こんな酒場が生き残ったものである。
ちなみに築は昭和30年の大むかし。

腰だけは曲がってしまった女将サンだが
頭脳は明晰にしてしゃべる言葉にいささかのよどみもない。
誰の助けを借りるでもなく、夜な夜な灯りを点している。
暖簾を出すのは19時半と遅めながら
敬服に値する営みと言うほかはない。

女将が、というより、やっぱり婆ちゃんと呼ぶにふさわしいが
みずから串を打ち、焼き上げた焼き鳥とともにビールを飲む。
串は鳥もも肉と豚レバーだったかな?
おそらくその2種だったと思われる。
数本をタレで焼いてもらい、七色をふっていただいた。

ほどなく東大OBのオジさんたちだったかな?
(クエスチョンマーク連発で失礼!)
すでにきこしめしたた4人連れがにぎやかに入店して来た。
こういう場所では知らぬ同士がすぐに打ち解けて会話を交わす。
ときには打ち解けすぎて、論争に及び、
はては口論に達することも日常の茶飯事。
当夜もずいぶん熱い言葉が飛び交ったが
結局は薬局、上手く収まって名刺を差し出した御仁もいた。
酔眼をこらすと、横浜は港南区の税理士サン。
遠路はるばるご苦労様でした。

カウンターだけの狭い店につき、長居は無用と言うより迷惑、
頃合いをはかって河岸を変えねばならない。
庚申だけに後身に席をゆずるワケだ。
フン、つまらんヨ! ってか?
へへ、ごもっとも、I agree with you, Sir!

=つづく=

「庚申酒場」
 東京都豊島区巣鴨4-35-3
 03-3918-2584