2012年3月2日金曜日

第264話 築地市場をブラブラと (その1)

旧知の焼鳥丼(正しくはサービス丼だけど)と
久々の再会をはたしたあと独り築地の魚河岸を往く。
東京広しといえどもブラブラして楽しい場所は
そうやすやすと見つからない。
浅草と銀座が双璧だろうが
そこへ割って入るのが築地だろうか。

まずは場内(なか)へ。
と言ってもプロが出入りする内の内へは行かない。
彼らが仕入れを済ませたあとで
朝食や喫茶に立ち寄る店舗が並ぶ一画に赴く。
もっともここ十数年で訪れる客は様変わり。
徒党を組んで鮨を食いに来る本邦オバタリアン軍団と
香港・上海あたりから来襲する”民漢人”が激増した。
その結果、地味な定食屋があこぎな廻船問屋、
もとい、けばけばしい海鮮丼屋に大変身を遂げたりもしている。
悲しむべし。

河岸の場内外を問わず、
生モノを扱う店が他のジャンルを駆逐し続けている。
嘆くべし。
J.C.は取材でもなければ、築地で鮨は食わない。
江戸前シゴトの踏み込みが足りないにぎりは
つまんでいて旨くないし、楽しくもないからだ。
酢めしの上に鮮度がいくら高くとも刺身を乗っけだけで
ハイ、鮨でござい! こんな輩は鮨職人とはいえない。
ローマは一日にして成らず!
江戸前鮨もまた一朝一夕にして成らず!

それにしても鮨屋における優勝劣敗の何と激しいことよ。
人気店は長蛇の列がグールグルだが
不人気をかこうところはスッカラカンのカア~で
その違いたるや残酷なくらいにあからさまだ。
日本国民の貧富差の拡大は愚かしき小泉&竹中のせいだが
築地の鮨屋の勝ち負けまで彼らの責任にゃできんわな。

好きだった洋食の「たけだ」がいきなり閉業して久しい。
「たけだ」にちょいと似たタイプの「小田保」は健在だ。
この店の名物、かきバターとかきフライのハーフ&ハーフは
一冬に一度は食しておかんとネ。

「豊ちゃん」のかき丼もユニークだ。
生がきとかきフライを一緒くたにして
玉子でとじたどんぶりは呉越同舟の趣きを漂わせている。
かと思うと、いつぞやはカウンターに隣り合わせた客が
カレーライスの上にデッカいかきフライを5個も乗っけていた。
よほどのことでないと驚かないJ.C.だが
この光景には度肝を抜かれることしきり。
いったいどんなツラをしてるのか拝もうとしたら
あにはからんや、見えそうで見えないのが隣りの客の顔。
ハハハ、これってホントにのぞきにくいもんですな。

=つづく=

「小田保」
 東京都中央区築地5-2-1築地卸売市場内6号館
 03-3541-9819

「豊ちゃん」
 東京都中央区築地5-2-1築地卸売市場内1号館
 03-3541-9062