2012年3月23日金曜日

第279話 趣向を凝らした披露宴 (その2)

目黒雅叙園にて結婚披露宴に出席中。
雅叙園といえば第一感は
和漢折衷のゴージャスな空間に中国料理ということになろう。
宴席の料理もやはり主力の中華であった。

珍しいシャンパン・サーベルのセレモニーが
乾杯の前に執り行われた。
シェフ・ソムリエが手にしたサブレ(サーベル)で
見事にシャンパーニュのボトルのそっ首をコルクともども刎ね落とす。
仏語でサブラージュという特殊技能である。
もともとは中世フランス海軍の艦長が艦の出初め式に際し、
航海の安全と海戦の勝利を祈願して自ら剣をとったもの。

乾杯の音頭は新郎の所属する港区の消防団の団長さん。
偶然の産物ながら、ここで出初め式つながりとはできすぎだ。
いかにもハマリ役で小粋なトークも座を和ませる。
一瞬、「昭和残侠伝 血染めの唐獅子」の挿入歌が脳裏をよぎった。

♪   鳶に命の 三番纏
   ジャンが鳴り出しゃ 捨て身の稼業
   とった火口は 根性で守る
   浅草(エンコ)生まれの 男伊達
   背中(せな)で燃えてる 唐獅子牡丹 ♪
            (作詞:水城一狼)

珍しくも健サンがヤクザではなく、鳶火消しに扮した異色作だ。

ポメリーのシャンパーニュをスーパードライに切り替えてリラックス。
随所に趣向が凝らされた楽しい宴である。
せっかくだから料理メニューをそのまま転載してみよう。

=御献立=

一、特製冷菜五種盛り合わせ
一、中華鮮鯛のワンタンサラダ
一、気仙沼産フカヒレ姿煮込み銀器盛り
   チコリキャビア・コラーゲンボール添え
一、大正海老の簪(かんざし)仕立て 干し貝柱ソース
一、旬野菜と湯葉ステーキの蟹肉餡掛け
一、和牛肉のマコモ茸捲き焼きXOソース アボガドサラダ添え
一、一口五穀米の蓮御飯 子宝水餃子
一、杏仁アイスとマスクメロン”ボン・マリアージュ”
一、コーヒー又は紅茶

おしなべて料理はけっこうだった。
鯛は旨みがもれてイマイチだが
大正海老も湯葉ステーキも牛肉のマコモ茸捲きも水準が高い。
杏仁アイスは特筆モノだ。
献立外のウエディングケーキはSKYAMKOのメンバー、
A子&Y里の即興デコレーション付き。
見た目、お味ともに花マル、楽勝で合格点に値した。

しかしながら料理のネーミングにはもう一工夫ほしかった。
”中華鮮鯛のワンタンサラダ”では
内容がダイレクトに伝わらないし、スマートさにも欠ける。
せめて”活真鯛の中国風サラダ 揚げ雲呑添え”であろう。
それにアボガドはアボカドが正しい。
もっと厳密にいえばアヴォカドである。

重箱の隅を突つくのはこれくらいにして
プロ集団が力を結集した華燭の典を振り返ると
和やかな中にも洗練された趣向に満ちて
久々に素敵な披露宴に席を連ねたという感慨が残った。
新郎新婦よ、互いに多少のトウが立っていようとも
手に手を取り合って、行く末永くお幸せに!

「目黒雅叙園」
 東京都目黒区下目黒1-8-1
 03-3491-4111