2012年3月22日木曜日

第278話 趣向を凝らした披露宴 (その1)

一昨日の春分の日。
今年初めて結婚披露宴に出席した。
久しぶりの披露宴である。
年々ジェネレーション・ギャップが拡がってゆくうえ、
わずらわしさから逃れるために
海外で式を挙げるカップルが増えたことも一因だろう。

招待状の代わりにしょっちゅう届くのが訃報だ。
悲しい報せはある日突然やってくる。
悲しみは駆け足でやってくる。

♪ 明日という字は 明るい日と書くのね
  あなたとわたしの明日は 明るい日ね ♪
            (作詞:アン真理子)

馬鹿かオレは!
訃報が舞い込むのはたぶんに歳のせい。
届くたびにため息をついていても始まらない。

宴の会場は目黒雅叙園・飛鳥の間。
われらが偽グルメ集団・SKYAMKOのメンバーの一人、
K子姫が本日の主役なのである。
普段はK子と呼び捨てだが今日はそうもゆくまい。
彼女の勤務先が雅叙園で文字通りのホームグラウンド。
経営陣や管理職のおエライさんも多数出席されており、
サービススタッフに心なしか緊張の色が垣間見える。

披露宴には遅刻スレスレの到着。
地下鉄の車内で原稿を書いていて乗り越した。
この日はたまたま4月から始まる週刊誌の連載第1回の締切日。
ふと浮かんだアイデアを忘れぬうちに書き残すのに没頭していた。

そんなこって駆けつけたのは新郎新婦入場の直前だった。
おかげで招待客中ただ一人、彼らと短い会話を交わせたし、
紋付袴に内掛け姿の”鶴と亀”を拝むこともできたのだった。
急ぎ足でテーブルに向かい、同席の面々に会釈して着席。
そこでオッ!となった。
皆さん乾杯でもないのにシャンパングラスを傾けているよ。
アレッ? 何だ何だ!
箸を上げ下げしてるじゃないか!
見ると目の前に小ぶりな松花堂弁当みたいな前菜も。

ここでJ.C.、思わず膝ポンである。
まことにけっこうなアイデアじゃありませんか。
とてもすばらしいシステムじゃないですか。
媒酌人や主賓の長いばかりでためにならないスピーチを
飲まず食わずで拝聴するのはたまりませんもんネ。
客の気持ちを慮った二人の差配に心から拍手を送りたい。

加えて媒酌人抜きのこの披露宴、
口火を切ったのはほかならぬ新郎である。
簡潔なお礼の言葉と挨拶は爽やかにして
男らしいものであった。
さすが、消防団員の一員である。
主賓お二人のスピーチもそれぞれにユーモアを交えて卓抜。
こいつはいい宴会になるゾ! 
早くも招待客の心に確信をもたらしたのだった。

=つづく=