2014年9月2日火曜日

第916話 こち亀タウンに出没 (その2)

こちら「葛飾区亀有公園前派出所」、略して「こち亀」。
その舞台となっている亀有。
戦後、城東有数の紅燈街としてにぎわった。
紅燈街とはレッド・ランターン・タウンのこと。
これじゃ余計に通じないか―。

いわゆるカフェー街、あるいは慰安所、
ハッキリ言ってしまえば赤線地帯である。
新吉原のように遊廓と呼ぶのはしっくりこない。
なぜなら日立製作所の社員寮2棟を
特定業者がそっくり買い取って開業したからだ。

亀有駅・南口から徒歩2~3分の距離となれば、
当時、省線にもっとも近い赤線だったであろう。
社員寮を改装したため、部屋はアパート形式。
部屋へ出はいりの際に
知った顔と鉢合わせするリスクが高かったそうだ。

亀有のカフェー街が隆盛したのは戦後と前述したが
実際に認可が下りて開業したのは
無謀極まりない戦争の末期も末期、1945年8月8日だった。
トルーマンが落とした2発の原爆のはざま、
スターリンが条約を破棄して侵略を始めた前日である。
そんなさなか、すでに焦土と化した帝都の片隅に
新たなる赤線がオープンし、客を集めたという事実に驚く。
人間のあくなき欲情はとどまるところを知らない。
もはや業(ごう)というべきか―。
いや、ことがセックスだけに性(さが)なのであろうヨ。

赤線地帯の解説はほどほどにしておこう。
コミック誌「少年ジャンプ」の連載における、
最長不倒距離を現在も更新中の「こち亀」である。
何せスタートしたのが1976年だからネ。
もっとも同じコミック誌「ビッグコミック」の「ゴルゴ13」には及ばない。

とにもかくにも「こち亀」のおかげで
一躍、全国区に上り詰めた葛飾区のローカルタウン亀有。
駅前の北口と南口には
警察官・両津勘吉ののスタチューが訪れるファンをお出迎えだ。

数年ぶりにこの町に出没してみた。
最近、隣り駅の金町にはちょくちょく出掛けるから
毎度まいど素通りでは
何だか悪いみたいで気が引けていたこともある。

その日は夕刻から荒川区・町屋にて小宴会が控えており、
久方ぶりの亀有ながら散策だけにとどめた。
南口を出て商店街をウロつき始める。
するとまもなく奇妙な現場に遭遇したのだった。
この光景を目にしてスッと立ち去れる散歩者、
殊に食いしん坊は絶対にいないでしょうヨ。

=つづく=