2014年9月30日火曜日

第936話 西日暮里の止まり木で (その3)

荒川区・西日暮里の「菊一」で
キリン満点生の中ジョッキを立て続けに2杯飲んだところ。
何だかあまり飲んだ気がしない。
メニューをチェックするとジョッキは440円、
サッポロ黒ラベルの中瓶は580円とあった。
ついでに酎ハイは380円である。

ちなみに葛飾区・金町の「ブウちゃん」では
ズドンと存在感のある中ジョッキが550円。
キリンorアサヒの大瓶は500円、酎ハイは300円だ。
西日暮里と金町、2軒の店は値付けにかなりの差があり、
「菊一」は庶民的な店とはいいがたい。
そんな店の中ジョッキが
440円の低価格ということは容量も推して知るべしなり。

さあ、何を飲もうか?
越後の銘酒、八海山と〆張鶴はともに950円。
察するに正一合ではあるまい。
そこで酎ハイにした。
下町ではこの焼酎ハイボールを
単にボールと呼ぶケースが多い。

つまみの欄に目を移すと、
キムチ、豆もやしなど、コリアン色が強い。
これもリトルコリア・三河島が至近のせいだろうか・・・。
コリアンフードを好まぬJ.C.ゆえ、
このまま飲むだけでもいいや、てな感じではあった。

そこへ突然、登場したのは恰幅のよい常連客だ。
女将が社長サンと呼んでたから、近隣の社長サンなのだろう。
いや、この御仁が迫力あったネ、
とにかく食欲がものスゴい。
恐るべき健啖家であった。

「焼いてくれ!」―こう一言。
すると見繕いの焼きとんがおそらく塩だろう、5本きた。
またたく間に平らげて
「タレをくれ!」―また一言。
今度はタレで5本きた。

計10本の焼きとんに加えて枝豆・冷奴・豆モヤシのトリオだ。
社長サン、奴に醤油を注しながらまたホザいた。
「醤油注しにはもっと醤油を入れとけヨ」―
カチンときたのか女将が言い返した。
「近頃の若い人は醤油よりポン酢なんですヨ」―
言い訳にはなってない言い訳だな、こりゃ。

説得されたのか、あきらめたのか、
もう何も言わぬ太っちょ社長は
携帯電話であちこち連絡をとり、
15分後には友人やら部下やらが数人集まった。
そしてまたいろいろと、料理の追加注文である。

店内にわかに活気づくとともに騒々しくなったので
止まり木の単身客は退散するとしよう。
まだ宵の口だし、向かうのは金町だな、こりゃ。

=おしまい=

「菊一」
 東京都荒川区西日暮里5-6-10
 03-3803-4405