(久しぶりの試写通い)の稿を続ける。
松茸があったことをおもい出し、
そのバター炒めで冷酒を少しのみ、
御飯はやめて小千谷の干しそばをあげることにした。
その旨を電話で家へ予告しておき、地下鉄で帰る。
晴天の夕暮れだが、しだいに冷気がきびしくなっている。
夜、我家にいる四匹の猫のうち、
もっとも年をとっている女猫のメイコが、長らく病気で寝ていたが、
めずらしく今夜、部屋へ入って来る。
しかし、もう歩けない。
歩こうとしては倒れ、倒れては必死になり、
起きあがろうとするありさまを見ていると、あわれになる。
何処へ行きたいのか、それがわかれば手を貸してやるのだが、
わからない。
メイコは我家の猫のうち、もっとも古い猫だ。
人間なら七十をこえているかとおもう。
メイコは未明、家内の部屋で息を引き取った。
猫が最後の期(とき)を迎える姿は、
立派だと、いつもながら、そうおもう。
J.C.も愛猫・プッチと暮らし始め、早や11年を超えた。
彼女の血統書には2004年2月29日生まれとある。
なるべく健康で長生きしてもらいたいと、
食事制限をするようになって1年半になるだろうか。
猫だけにひもじい思いをさせるわけにもいかず、
自分も節食のおつき合いに努めてはいる。
おかげで2キロ以上体重が減り、体調はすこぶるよろしい。
プッチが息を引き取るとき、どんな気持ちになるんだろうネ。
もちろん哀しむに決まっているけれど、
それだけではないような気がする。
今も足元で惰眠をむさぼるその表情は
老猫に似ず、何ともあどけない。
(出さなかった年賀状)
一九八九年の新年を迎える。
六十をこえると格別のおもいもない。
雑煮も元日だけできょうはチキンライス。
一日中、テレビの忠臣蔵を見ていた。
年賀状がぞくぞくと到来。今年にかぎって、心が落ち着かず、
賀状は早く刷りあがっていたのだが、ついに書けなかった。
体調をくずして、千数百枚の宛名を書く気力がなかったことも事実だ。
眼は老人性のかすみ目らしく、
名簿の名を追うのも骨になってきた。
いよいよ、翁もあぶない。
それにしても、千数百枚の年賀状とは!
健康に害が及ぶこと、はなはだしいのではないか。
自殺行為というほかはなく、思いとどまって、よかったぞなもし。
=つづく=
松茸があったことをおもい出し、
そのバター炒めで冷酒を少しのみ、
御飯はやめて小千谷の干しそばをあげることにした。
その旨を電話で家へ予告しておき、地下鉄で帰る。
晴天の夕暮れだが、しだいに冷気がきびしくなっている。
夜、我家にいる四匹の猫のうち、
もっとも年をとっている女猫のメイコが、長らく病気で寝ていたが、
めずらしく今夜、部屋へ入って来る。
しかし、もう歩けない。
歩こうとしては倒れ、倒れては必死になり、
起きあがろうとするありさまを見ていると、あわれになる。
何処へ行きたいのか、それがわかれば手を貸してやるのだが、
わからない。
メイコは我家の猫のうち、もっとも古い猫だ。
人間なら七十をこえているかとおもう。
メイコは未明、家内の部屋で息を引き取った。
猫が最後の期(とき)を迎える姿は、
立派だと、いつもながら、そうおもう。
J.C.も愛猫・プッチと暮らし始め、早や11年を超えた。
彼女の血統書には2004年2月29日生まれとある。
なるべく健康で長生きしてもらいたいと、
食事制限をするようになって1年半になるだろうか。
猫だけにひもじい思いをさせるわけにもいかず、
自分も節食のおつき合いに努めてはいる。
おかげで2キロ以上体重が減り、体調はすこぶるよろしい。
プッチが息を引き取るとき、どんな気持ちになるんだろうネ。
もちろん哀しむに決まっているけれど、
それだけではないような気がする。
今も足元で惰眠をむさぼるその表情は
老猫に似ず、何ともあどけない。
(出さなかった年賀状)
一九八九年の新年を迎える。
六十をこえると格別のおもいもない。
雑煮も元日だけできょうはチキンライス。
一日中、テレビの忠臣蔵を見ていた。
年賀状がぞくぞくと到来。今年にかぎって、心が落ち着かず、
賀状は早く刷りあがっていたのだが、ついに書けなかった。
体調をくずして、千数百枚の宛名を書く気力がなかったことも事実だ。
眼は老人性のかすみ目らしく、
名簿の名を追うのも骨になってきた。
いよいよ、翁もあぶない。
それにしても、千数百枚の年賀状とは!
健康に害が及ぶこと、はなはだしいのではないか。
自殺行為というほかはなく、思いとどまって、よかったぞなもし。
=つづく=