2016年4月8日金曜日

第1334話 アイスランドの鯨 (その1)

 ♪    花籠抱えて 誰を招く
    アイルランドの村娘
    夢見る瞳よ 君が抱く
    野ばらの花は 愛の花
    変わらぬ誓いを 囁けば
    うるむ涙で じっとみてる
    心の底まで みつめてる
    愛の瞳の いじらしさ   ♪
    (作詞:H.Ruby / 訳詞:島田馨也)

ハワイアン調のメロディーに乗せて
ディック・ミネの歌声が列島に流れたのは1937年。
盲目の大日本帝国が
自壊の道をまっしぐらのご時勢だった。
前年には二・二六事件が勃発してもいる。

「アイルランドの娘」の演奏は
バッキー白片とアロハハワイン・トリオ。
バッキーは日本におけるハワイアンの宗主で
松尾和子と組むことの多かった、
和田弘とマヒナスターズの育ての親でもある。

それにしても「アイルランドの娘」が
どうしてハワイアンなのか理解に苦しむけれど、
この曲はアメリカ映画「恋の走馬燈」(1929年)の主題歌で
ハナからハワイアン・タッチだったそうだ。

前フリが長くなったが本日の主役は
アイルランドの娘ならぬ、アイスランドの鯨。
2~3ヶ月前にたまたま遭遇してからぞっこん、
入れ込むことじんじょうではあらしまへん。

とにかく見た目も食味もすんばらしい。
それほどの機会に恵まれたわけではないが
今まで食べてきた鯨たちを
いっぱ一からげにして軽く一蹴するほどの美味だった。

なぜだろう? なせかしら?
それはでんなァ、
長いこと日本人が食することのできなかった、
大型ヒゲクジラの雄、ナガスクジラだったからざんす。
調査捕鯨の名のもとに日本の捕鯨船が持ち帰るのは
ほとんどがミンククジラで体長10m以下の小型種。
惑星最大のシロナガスクジラを筆頭に
二番目に大きいナガスクジラもまた、
日本人には高嶺の花だったんですヨ。

1974年、J.C.はノルウェーの首都・オスロのレストランで
大勢の客がホエール・ステーキ(鯨種は不明)に
舌鼓を打つ光景を目の当たりにしたことがある。
揃いも揃って旨そうに食うんだな、これがっ!

=つづく=