2016年4月19日火曜日

第1341話 チューブばっかり三兄弟 (その5)

見るともなしに見た「今一」のカウンター内。
オヤジAのササミが焼き上がり、串が6本、皿に並んだ。
ここまではよかったんだが問題はこのあとだ。

店主が差し出した串にアシスタントよろしく、
バイト娘がチューブのわさびを搾り出した。
エッ? エッ?
何も生わさびをおろせとは言わないが
それはないじゃろに。

お次も同じくチューブの練り梅ときたもんだ。
(ゲゲッ、こりゃたまったモンじゃないぜよ)―
もちろん口には出さず、胸の奥でつぶやいただけである。
だけどさァ、いったい店主はどういう神経してるんだろう。

極め付きは先刻アラサーが確認した明太子だ。
これまたお察しの通り、チューブをグニュグニュ。
見ていて気色が悪くなっちまった。

とにもかくにもこれにて三兄弟の揃い踏み。
呆れ果てたJ.C.、言葉がとてもみつからない。
焼き鳥屋といえども(けして見下しているわけではない)
一応は料理人のはしくれ、
せめてプロのプライドのかけらくらいは残しておいてほしい。

それにしても作るほうも作るほうだが
こんな駄品をありがたがって頼むほうも頼むほう。
しかも二人で6本だヨ。
他人事ながら一部始終を目撃していてドッと疲れた。
やれやれ。
 
ササミをしきりに噛みながら
オヤジAが店主に肥を掛け、もとい、声を掛けた。
「女の子、また変わったんだねェ・・・」
「ええ、彼女で5人目です」
「よく変わるんだねェ・・・」
「ええ、でも、みんな辞めるときは
 次の娘を紹介してくれてるんですヨ」
 
何だ、なんだ、1年そこそこでバイト娘が早や五代目だとサ。
再び思ったネ、いったい店主はどういう神経してるんだろう。
浅草の江戸前鮨店、
「弁天山美家古」なんぞ、150年掛けてやっと五代目だぞ!
 
入店してすぐ彼女がフロム・チャイナと判ったが
どうやら5人すべてがそうらしい。
いや、恐れ入りました。
観光客による”爆買い”だけじゃないんだヨ。
居留者の”爆働き”もまた、この島国を席巻しちゃってるんだヨ。
 
=おしまい=
 
「今一」
 東京都台東区3-18-5
 03-3828-0200