2016年12月27日火曜日

第1523話 期待通りの焼きとん屋 (その5)

台東区・上野の焼きとん屋にいる。
カウンターはほぼいっぱいだったが
一番奥の端の席を何とか空けてくれた。

着席してみてちょいと懸念が湧いた。
スタッフが若いからである。
加えて上野店を名乗るからにはほかにも出店しているわけで
今はやりのチェーン店だろうという思惑。
それでもこの目で確かめた品書きは
それなりの店であることを証明しており、
そこに信頼感が生まれるのである。

ビールはサッポロ・ラガー、いわゆる赤星だった。
昔を偲ぶよすがとして注文することもあるが
2本並べて飲み比べたら黒ラベルのほうが旨かった。
そりゃそうだろうヨ、もしも赤星が上だったら
サッポロの主力商品は”黒”じゃなく、”赤”のハズだ。

うれしいことに串は1本から注文可能。
単身客にはありがたいものである。
まずはレバを2本にシロ(小腸)を1本。
この2種類は焼きとん界の基本中の基本なのだ。

レバを2本所望したのは
舌を歓ばせるのもさることながら
肝臓を労わる狙いがあってだ。
どちらもタレでお願いした。

焼きとん屋のベーシックな部位は上記2種に
タン(舌)・ハツ(心臓)・ナンコツ(喉仏)を加えた5種。
J.C.はこの3種を塩で頼む。
人間に例えると、
ヘソから上の部位には塩、下にはタレがよく合う。

レバが実に旨い。
ミディアムレア感じの火の通しがまことにけっこう。
素材の鮮度も申し分ない。
「こりゃ当たったゾ!」―自然に頬がゆるんだ。

下茹でして処理したシロもレバほどではないにせよ、
軽く合格点をクリアしている。
中には噛んでも噛んでも噛み切れないシロがあるが
アゴの丈夫な若いうちはよくとも
還暦過ぎたらモロに”年寄りの冷や水”と化す。
いい歳こいて無鉄砲な冷や水を”鉄砲水”と称する。

調子に乗ってキクというのを注文する。
卓上のメニューには小腸付近の脂とあった。
となると、シロコロホルモンみたいなモンかしら?
聞きなれない部位だからこそ、
一食の価値を見出せるというものだ。

=つづく=