2018年7月18日水曜日

第1917話 一年半ぶりの焼肉 (その3)

「炭火焼肉 きたむら」の四人掛けテーブルに二人。
ビールを注しつ注されつしながら肉の到着を待っている。
卓に炭火が運ばれ、タレとレモン汁が配置された。
キャッシャーの脇に
「備長炭使用店」の札が掲示されているが
備長炭は備長炭でも紀州産の上物ではあるまい。
炭に成形の痕跡が残って自然な感じがしない。
まっ、細かいことを追求するのはよそう。

最初にハラミとカルビが登場。
どちらにもうっすらとタレが掛かっている。
互いに箸でつまみ、ハラミのほうから焼き網に乗せた。
焼き過ぎないように一度だけターンオーバーさせてパクリ。
適度な噛み締め感が快い。

近年、といっても20年は経つかな、
ある時期から急速に人気を集めたハラミだが
脂っこいのが苦手な向きの強い味方になってくれる。
アメリカではハンガー、フランスではバヴェットと呼ばれ、
ファンのあいだではサーロイン、
アントルコートよりも愛好されている。

カルビもいいネ。
ハラミに比べて噛み応えが増している。
これが上カルビとなったらどんなのが出て来るのかネ?
庶民には並でモア・ザン・イナッフじゃないかいな。

ここから二人でボトル1本はちょいと荷が重いから
グラスワインを所望する。
珍しい黒ワインを見つけた。
一般に黒ワインとはルーマニア産の暗褐色の赤ワインだ。

サントリーが手がけているカーニヴォのジンファンデルを。
うわっ、すんごい凝縮感である。
当方の好みじゃないが相方は絶賛していた。
とにもかくにも牛の焼肉との相性はすこぶるよい。

続いてロースと内臓2種。
ロースはしっとりとして懸念されたパサつきもなく、
期待を大きく上回った。
ホルモンとレバーは焼きとんのシロとレバのほうが好き。
内臓は牛よりも豚や鶏を好む。

特別メニューの角切り和牛・漬けサガリを追加。
ついでに同じく黒ワインの、今度はコスタ・ルッシを。
サガリは牛の横隔膜だからハラミと変わらない。
ただ、厳密にいうと、横隔膜(ハラミ)でも
背中(上)側をカクマク、
肋骨(下)側をサガリと区別するのが正しく、
ハラミ=カクマク+サガリ となるそうだ。

理屈はともかく、漬けサガリが旨かった。
先刻のハラミと同等、いや、それ以上かもしれない。
黒ワインはカーニヴォの圧勝で厚みがまったく違う。
何やかやと一年半ぶりの焼肉を満喫してしまった。
毛嫌いしていたことなど忘れ、近々また来よっと―。

=おしまい=

「炭火焼肉 きたむら」
 東京都北区西ケ原1-3-7
 03-5972-4170