2018年10月15日月曜日

第1980話 「千住の永見」と「やっちゃbar」(その2)

北千住の人気店「千住の永見」のカウンターに独り。
待っていたレバ串ではなく、
あとから頼んだ串かつが先着した。
不自然にカタチの整った細長い長方形が2本である。

練り辛子をつけてパクリとやったとき、レバも運ばれた。
おや、意に反して鳥のレバである。
本来は豚のレバが好みなれど、鳥も嫌いじゃない。
そこそこ美味しくいただいて
皿の上には4本の竹串が空しく残された。
さあ、河岸を変えよう。

「やっちゃbar」に舞い戻る。
店名の由来はかつて千住にあった、
やっちゃ場、すなわち青果市場に疑いの余地はない。
逆L字カウンターが7席ほどと2人用テーブルが2卓のみ。
本格的なフレンチをも供するカフェバーといったふうだ。

先客はおらず、店主とサシ向かいである。
まずはチリの白ワイン、ロス・ガンソスのシャルドネを1杯。
壁のボードに書かれた本日の品書きから
海老とズッキーニの水餃子 サフラン・クリームソースを択ぶ。
これがクリーンヒットで、皮・餡・ソースが三位一体。
とりわけサフラン香るソースに二重丸を付けたい。

続いての1杯はアレグリア・カルメネール。
同じくチリの赤ワインだがカルメネールの原産地はボルドー。
カベルネ・ソーヴィニヨンの流れを汲む品種であるため、
ブルゴーニュ派のJ.C.には重々しい。
赤ワインのラインナップは揃って重いタイプのみ。
選択の余地がまるでないが
店主の趣味にケチなどつけられんもんネ。

ガッシリタイプの赤に合わせて何かもう1品ほしい。
お肉の田舎風テリーヌは一般的な田舎風パテ、
いわゆるパテ・ド・カンパーニュと同意だろう。
力強いワインに力負けしない1皿に助けを求めた。
バゲットも忘れずにネ。

ベーコンだかパンチェッタだか、
豚のバラ肉に包まれたパテは肉々しいこと極まりなく、
カルメネールと土俵中央でがっぷり四つ、
互いに両まわしを引きつけ合う格好となった。
結局、勝負はつかずに水入り引き分けの態を成す。

パテに添えられた粒マスタードと
きゅうりのピクルスがまたピッタリ。
マスタードはディジョンの粒入りに和辛子を混ぜ込んだ由。
店主、なかなかに芸が細かい。
既製品のピクルスがその上を行って
甘味と酸味のハーモニーはこれ以上望めぬほどのもの。
瓶ごと買って帰りたいくらいだった。

北千住に来たらちょい飲みに立ち寄りたい「やっちゃbar」。
課題はグラスの赤の取り揃えで
ビールも気に染まぬ銘柄だから
シャルドネでサフランを使った、
料理をいただくほかに手立てがないんだがネ。

「千住の永見」
 東京都足立区千住2-62
 03-3888-7372

「やっちゃbar」
 東京都足立区千住2-52
 080-4320-9977