2018年10月19日金曜日

第1984話 やきめしという名のチャーハン (その1)

J.C.が先に席を立ったおかげで
かのキャバクラ嬢はポークソテーの鉄板皿を
ちゃんと横に戻して食べられたのだろうか?
そんなことを思いながら西池袋の街を北に向かった。

ラブホ街を抜け、住宅街を突き進んで
古ちゃけた商店街に入った。
青果店や精肉店が並び、
さすがに鮮魚店は見当たらなかったが
古き良き昭和の時代を偲ばせる通りに
「なみき食堂」はあった。

「キッチン チェック」同様、ここも初訪問。
引き戸を引くと、想像通りの光景が浮かび上がった。
先客は酎ハイだかサワーだかを飲みながら
スポーツ新聞に見入る近所の常連サンと
小さな男の子を連れた若い夫婦の計4人。

家族の隣りの卓を占めて
さっそくのビールは恨めしくもキリンラガーの大瓶。
キリンならせめて一番搾りであってほしかった。
まっ、仕ッ方なかんべサ。
ベター・ザン・ナッシングってこった。

時刻は13時を過ぎていた。
あれっ! TVがNHKの「素人のど自慢」を映してるぜ。
何で土曜日に「のど自慢」やってんの?
先週のビデオかな?

いや、違う、違う、本日のオン・エアそのものだ。
この時間は「西郷どん」のハズだが
どうも最近、NHKのやることはよう判らん。
受信料の値下げはありがたいけどネ。

注文の品はハナから決めてあった。
フツーの飲食店ではまず見ることなく、
大衆食堂からもほとんど姿を消した絶滅危惧種、
そう、やきめしである。

「キッチン チェック」で半ライスに抑えたものの、
すでに腹は八分目、ここでやきめしのハーフなんて
頼めるハズもなく、勇気を奮い起こしてオーダーに及ぶ。
これにより、腹十二分目になること、ミエミエである。

隣りの卓ではパパがやきめし、ママはチキンライス、
子どもはラーメンをすすっている。
一家揃って嬉しそうに美味しそうに食べている。
平和でシアワセな家庭なんだねェ。

=つづく=