2018年10月4日木曜日

第1973話 盆の敵(かたき)を長月で討つ

さて葉月、長月と連月で
川崎に遠征(そう遠くはないけれど)した理由である。
先のお盆に田園調布から蒲田を経て
川崎に到達したのはすべて街随一の大衆酒場、
「丸大ホール」で飲みたかったがため。
それをお盆休みのせいで袖にされたのだった。

浅野内匠頭じゃないが
「この間の遺恨、覚えたか!」―
そんな気構えで夕刻の酒場を訪れた。
当店は朝から晩まで通し営業していながら
どの時間帯も客足が途絶えることがない。

ほぼ満席につき、知らない人と袖振り合うこと必定。
これも多生の縁ということだろうか。
昼の「成喜」も相席、夜の「丸大」も相席。
昼のカップルとは言葉を交わさなかったが
夜の先客、単身のオッサンはやたらに人懐っこかった。
出し抜けに話し掛けてきて
まるでハナから3人で飲んでるみたい。

口角泡を飛ばされながら当方も負けずに飲んだ。
大衆酒場のオキマリ、ビール大瓶の銘柄は
スーパードライとあとは一番搾りだったかな?
キリンのお膝元にアサヒが存在感を放つ。

おっと、かきフライがあるじゃないか!
いよいよシーズン到来か!
とは思ったものの、ここには通年あるらしい。
それでもいいやとばかり、見切り注文に及ぶ。

相方がついでに頼んだのは平凡なポテトサラダ。
まったくもってオンナって生き物は冒険をしないネ。
世の平和のためにはそれでいいのかもしれない。
現実に臨んでディフェンシヴな姿勢の保持は
ある意味、必要なことなのかもしれない。

結局は薬局、
そのポサラもかきフも加えて追加したホヤ酢までも
けして悪いものではなかった。
さすがに「丸大ホール」である。
腐っても鯛、安くっても丸大であった。

長居は無用とばかり、
腰を上げ掛かったとき、オッサンに訊かれる。
これからの予定、行く先のことだ。
相方は名にし負うスナッキー、
「蒲田あたりのスナックかな?」―
京急蒲田の呑川沿いは大田区有数のスナック地帯だ。

再び結局は薬局、
驚いたことにオッサン、蒲田までついて来ちゃったヨ。
袖振り合うも多生の縁。
いえ、いえ、少なくとも”多少の縁”ではなかったネ。
いや、お疲れの夜となりました。

「丸大ホール」
 神奈川県川崎市川崎区駅前本町14-5
 044-222-7024