2018年10月24日水曜日

第1987話 傾きかけた老舗そば店 (その2)

藍染川通りが尾竹橋通りに合流する、
花の木交差点を過ぎてほどなく、
目にとまったのが見るからにヨレヨレの日本そば屋だった。
ピサの斜塔ほどではなくともかなり右に傾斜して
隣りの民家にもたれかかってるじゃないの。

   ♪ あんまり傾きが ヒドいので
   さぞや民家サン 重たかろ
   サノ ヨイヨイ    ♪

てな光景にしばし目を奪われた。
何となく興味を持って店先にたたずむ。
店頭設置のTVモニターがグルメ番組の録画を流している。
何でもこの「京屋」は創業80年を超える老舗で
今は若き四代目が奮闘中とのことである。

ふ~む、一訪の価値ありかもしれんゾ。
空腹感にも後押しされて何の抵抗もなくスルリと入店。
ところが世の中甘くはなく、はからずも満席である。
入口に直立してしばし待つこととなった。
このとき脳裏をかすめたのは森昌子の「立待岬」である。

  ♪  待って待って 待ちわびて
   立待岬の 花になろうと
   あなたあなた 待ちます
   この命 涸れ果てるまで  ♪
      (作詞:吉田旺)

一瞬、函館市郊外の岬の景色がよみがえる。
昌子が「立待岬」なら、J.C.は「立待店先」ときたもんだ。

待つこと5分でカウンター席が空き、
キリンラガーしかないビールの大瓶を仕方なく飲みながら
注文したのは、もりそば&ミニ親子丼のセット(800円)。
ミニ丼はほかに牛丼とカレーからも択べる。
厨房内は四代目が孤軍奮闘。
接客も彼の母親だろうか、古希前後の女将サン独りきり。
それにしても最近はキリンラガーとの遭遇ばかりだ。
2切れ付いたきゅうりの浅漬けがせめてもの救いか。

待つこと今度は10分で整ったそばは
ほどほどのコシを備えたツルツル系。
つゆは下世話感を残してちょい甘め。
子どもの頃によく食べた庶民の町の日本そばである。

親子丼はそば屋の出汁が効いており、いいカンジ。
どんぶりモノのつゆだくは大嫌いだが親子だけは赦す。
もともとつゆ気の多いかつ丼・牛丼はもとより、
天丼・うな丼においても
ごはんの上に丼つゆ・丼たれは掛けてほしくない。

いずれにしろ傾いているのは建物だけの「京屋」。
経営に傾きが見られないのはご同慶の至りである。
お二人ともどうぞ頑張ってくらしゃんせ。
その命、涸れ果てるまで―。

「京屋」
 東京都荒川区荒川7-43-2
 03-3895-2680