けやきの並木も涼やかな多摩堤通りを横断し、
ものの5分で武蔵新田に到着。
昭和33年に廃業を余儀なくされるまで
城南に咲く一大花街だった土地柄である。
ただし、花街ではなくカフェー街と呼ばれていたそうな。
100人以上の女性がおのおの1室をあてがわれ、
営業していたという。
当地は日本の復興を支えた工業地帯。
彼女たちは縁の下の力持ち的役割をはたした。
ほかの色街よりも若い娘が多かったため、
遠来の客も少なくなかったという。
武蔵新田は実に9年ぶりだが
今、町を歩いてみても、往時の名残りを偲ぶよすがとてない。
それでもJ.C.には多摩川線沿線でわりと馴染みのある場所。
角打ち「飯田酒店」、天ぷら店「ころも」あたりで飲んだ。
真っ先に「飯田酒店」に向かうと、店は開いていたものの、
常連らしきオジさんが女将と談笑している。
まだ口明けなのだ。
ここでオジャマ虫が入店したら
漂う空気がガラリと変わってしまう。
あとで寄るつもりでいったん立ち去った。
武蔵新田駅前で目を引く店舗は2軒。
踏切の北側にある「三河屋製パン所」と
南側の酒場「白鶴駅前店」だが、どちらもまだ利用していない。
よしっ、せっかくの機会だ、両方いてまえ!
製パン所といっても単なる町のパン屋さん。
しかしながら、そのたたずまいは
ビッグコミック・オリジナルの誌面から抜け出た如くだ。
そう「三丁目の夕日」ですネ。
さして広くもない店内に先客なく、スタッフの姿もない。
ハムカツ・三色・黒パンをトレーに乗っけて
「スミマセ~ン!」―
奥に肥をかける、もとい、声をかけると
出てきたのはオバちゃんならぬ、若いアンちゃん。
ちょいとばかり虚を衝かれながらのお勘定は420円也。
安っす~ぅ!
この町が棲みよい町であることを確信した瞬間だ。
踏切を渡りながら思った。
黒パンのせいだろうか・・・パンの袋がズシリと重い。
家へ帰って開けてみると、それぞれに質量が高かった。
製パン所から1分足らずで「白鶴」へ。
早いとこ琥珀色の、あの液体を流し込んどくれ!
渇いたノドがせっつくことしきりであった。
=つづく=
ものの5分で武蔵新田に到着。
昭和33年に廃業を余儀なくされるまで
城南に咲く一大花街だった土地柄である。
ただし、花街ではなくカフェー街と呼ばれていたそうな。
100人以上の女性がおのおの1室をあてがわれ、
営業していたという。
当地は日本の復興を支えた工業地帯。
彼女たちは縁の下の力持ち的役割をはたした。
ほかの色街よりも若い娘が多かったため、
遠来の客も少なくなかったという。
武蔵新田は実に9年ぶりだが
今、町を歩いてみても、往時の名残りを偲ぶよすがとてない。
それでもJ.C.には多摩川線沿線でわりと馴染みのある場所。
角打ち「飯田酒店」、天ぷら店「ころも」あたりで飲んだ。
真っ先に「飯田酒店」に向かうと、店は開いていたものの、
常連らしきオジさんが女将と談笑している。
まだ口明けなのだ。
ここでオジャマ虫が入店したら
漂う空気がガラリと変わってしまう。
あとで寄るつもりでいったん立ち去った。
武蔵新田駅前で目を引く店舗は2軒。
踏切の北側にある「三河屋製パン所」と
南側の酒場「白鶴駅前店」だが、どちらもまだ利用していない。
よしっ、せっかくの機会だ、両方いてまえ!
製パン所といっても単なる町のパン屋さん。
しかしながら、そのたたずまいは
ビッグコミック・オリジナルの誌面から抜け出た如くだ。
そう「三丁目の夕日」ですネ。
さして広くもない店内に先客なく、スタッフの姿もない。
ハムカツ・三色・黒パンをトレーに乗っけて
「スミマセ~ン!」―
奥に肥をかける、もとい、声をかけると
出てきたのはオバちゃんならぬ、若いアンちゃん。
ちょいとばかり虚を衝かれながらのお勘定は420円也。
安っす~ぅ!
この町が棲みよい町であることを確信した瞬間だ。
踏切を渡りながら思った。
黒パンのせいだろうか・・・パンの袋がズシリと重い。
家へ帰って開けてみると、それぞれに質量が高かった。
製パン所から1分足らずで「白鶴」へ。
早いとこ琥珀色の、あの液体を流し込んどくれ!
渇いたノドがせっつくことしきりであった。
=つづく=