京急蒲田駅前のアーケードを抜けて目指したのはJR蒲田駅。
胸に秘めた一案とは「三州屋本店」で一飲に及ぶこと。
都内に数多ある「三州屋」の本家本元がこちらである。
もっとも今となってはみな暖簾分けでそれぞれに独立採算制だ。
2年半ぶりに敷居をまたいだ。
底辺の短いL字形カウンターの長いほう、
その真ん中あたりに落ち着く。
オネエさんにサッポロ黒ラベルの大瓶をお願いした。
すると、小首を傾げた彼女曰く、
「キリンなんですけど・・・」
虚を衝かれてサッポロ赤星の有無を訊ねると、
瓶はキリンのクラシックラガーとエビス、
生はキリンラガーのみだという。
ことここに及んで遅ればせながら思い出した。
そうだった、この本店だけはキリン主体なんだヨ。
他の「三州屋」はいづれも、
ビールはサッポロ、清酒は白鶴と相場が決まっている。
多摩川の向こう側、生麦事件の勃発した生麦には
キリンの製造工場があるからネ。
都内といえども大田区・蒲田は
神奈川県の川崎や横浜同様に、キリンのシマなんだろうな。
ここは多少なりとも苦みが抑制される(されたように感じる)、
生のほうを中ジョッキで所望する。
突き出しはわずかながらもしらすおろしで
先ほどの「井戸屋」とかぶった。
壁の品書きを見上げて、そっくり返りそうになった。
何と稀少な星がれいの刺身があるじゃないか。
意外なところで遭遇したものだ。
しかも、この高級魚の刺身がたったの580円。
売切れの憂き目を見る前に即刻、発注した。
ちなみに刺身は平目も本まぐろも同値であった。
星がれいは真子がれいをしのいで
カレイ類の頂点に立つ、美味の極み。
もっとも刺身で食べてこそで
煮付けなら東のナメタ、西のメイタということになろうヨ。
こうして活字にすると判り易いが
会話中に”ホシガレイ”と聞いたら
干しがれいをイメージする向きが多かろう。
赤字覚悟で仕入れた店の心意気を
「干したカレイなの?」-
客にこう返されたひにゃ、立つ瀬がないやネ。
運ばれた星がれい刺しは立派な5切れに加え、
厚みのあるエンガワが2片。
朝締めの新鮮な身肉は死後硬直が解けておらず、
食感はコリコリのシコシコ。
これが破格の580円ときては
恐れ入谷の鬼子母神、びっくり蒲田の星がれいであった。
=つづく=
胸に秘めた一案とは「三州屋本店」で一飲に及ぶこと。
都内に数多ある「三州屋」の本家本元がこちらである。
もっとも今となってはみな暖簾分けでそれぞれに独立採算制だ。
2年半ぶりに敷居をまたいだ。
底辺の短いL字形カウンターの長いほう、
その真ん中あたりに落ち着く。
オネエさんにサッポロ黒ラベルの大瓶をお願いした。
すると、小首を傾げた彼女曰く、
「キリンなんですけど・・・」
虚を衝かれてサッポロ赤星の有無を訊ねると、
瓶はキリンのクラシックラガーとエビス、
生はキリンラガーのみだという。
ことここに及んで遅ればせながら思い出した。
そうだった、この本店だけはキリン主体なんだヨ。
他の「三州屋」はいづれも、
ビールはサッポロ、清酒は白鶴と相場が決まっている。
多摩川の向こう側、生麦事件の勃発した生麦には
キリンの製造工場があるからネ。
都内といえども大田区・蒲田は
神奈川県の川崎や横浜同様に、キリンのシマなんだろうな。
ここは多少なりとも苦みが抑制される(されたように感じる)、
生のほうを中ジョッキで所望する。
突き出しはわずかながらもしらすおろしで
先ほどの「井戸屋」とかぶった。
壁の品書きを見上げて、そっくり返りそうになった。
何と稀少な星がれいの刺身があるじゃないか。
意外なところで遭遇したものだ。
しかも、この高級魚の刺身がたったの580円。
売切れの憂き目を見る前に即刻、発注した。
ちなみに刺身は平目も本まぐろも同値であった。
星がれいは真子がれいをしのいで
カレイ類の頂点に立つ、美味の極み。
もっとも刺身で食べてこそで
煮付けなら東のナメタ、西のメイタということになろうヨ。
こうして活字にすると判り易いが
会話中に”ホシガレイ”と聞いたら
干しがれいをイメージする向きが多かろう。
赤字覚悟で仕入れた店の心意気を
「干したカレイなの?」-
客にこう返されたひにゃ、立つ瀬がないやネ。
運ばれた星がれい刺しは立派な5切れに加え、
厚みのあるエンガワが2片。
朝締めの新鮮な身肉は死後硬直が解けておらず、
食感はコリコリのシコシコ。
これが破格の580円ときては
恐れ入谷の鬼子母神、びっくり蒲田の星がれいであった。
=つづく=