2019年10月23日水曜日

第2247話 22年ぶりのタコス (その1)

四つ足ならば、椅子・テーブル以外は何でも食べる中国人。
口に入れば、按摩の笛でもしゃぶる日本人。
ハハ、いい勝負だネ。
だけど、朕思うに、もとい、我思うに
メキシコ料理はあまり人気がないんじゃないかな?
中国人にも日本人にも―。

ところがアメリカ人は大好きなんだ。
本場に近い西海岸はもとより、
アリゾナ、ニューメキシコ、テキサスは言うに及ばず、
東のニューヨーク、ボストン、ワシントンDCあたりでさえ、
彼らはホントによく食べる。
それもバカみたいに―。

メキシコ人にとって最重要な作物はトウモロコシ。
そのままかじるのではなく粉に挽く。
欧米人の小麦粉に匹敵する存在だ。
トウモロコシ粉の薄焼きパンがトルティーヤで
メキシコ料理における基本中の基本がコレ。
タコス、エンチラーダ、ケサディーヤみなその応用版である。

ところがブリトーだけは小麦粉を使う。
コンビニにタコスやエンチラーダはないのに
ブリトーがあるのは製造者にとってトウモロコシ粉は
調達しにくいうえ、コストアップに直結するからだろう。
たとえ一生懸命作ったところで
”本部”という名の悪代官に買いたたかれるのが関の山。
儲からないものを作っちゃいけない。

トルティーヤは鬼畜スペインに中南米が征服される前から
先住民の間で食べ続けられてきた。
彼らは日本人と同じモンゴロイドの末裔である。
そもそも20~15万年前にアフリカに出現したとされる、
ホモ・サピエンス(現生人類)だが
5万年前には東アジアに進出し、モンゴロイドを形成してゆく。
その後、1万3000年前に往時は地続きだった、
ベーリング地峡を越えてアメリカ大陸に行き着いた。

なぜか?
サケ・マスを筆頭に豊富な水産資源を追い求めた結果だ。
彼らがメキシコ付近に達すると、
その地にはトウモロコシという天の恵みが待っていた。
狩猟・漁撈に代わって、生きる糧を農耕で
得ることができれば、人々の生活は安定する。
弥生人の稲作文化がそれを如実に証明している。

トウモロコシの恩恵を受けた彼らの一部は
農耕に嫌気がさしたのか、なおも移動を続けた。
つい最近・・・でもないけれど、
2500年前には太平洋へと打って出た。
その島々が今回のラグビーW杯で日本にやって来た、
サモアであり、フィジーであり、トンガである。
ルーツを同じくする民族同士が5万年の時を越え、
この島国でめぐり合ったのだ。

=つづく=