2022年12月8日木曜日

第3163話 ラーメンに 香るトリュフと ポルチーニ (その1)

住まいの近所に美味しいラーメン店がない。
富山出身の老夫婦営む「砺波」が数年前に
閉業してしまい、界隈は不毛地帯と化した。
よって、食べたくなったら鶯谷まで出向いている。

先月のアタマ、団子坂下に「しのぶ」が開店。
テリー伊藤とワタミグループがタッグを組んだ、
「から揚げの天才」が撤退した跡地だ。

都内に限らず、あっちゃこっちゃに
すさまじい開店ラッシュを仕掛けた「天才」は
今や目も当てられぬ凋落ぶり。
他のから揚げチェーンもおおむね苦戦続きだが
から揚げだけで商機をつかめるはずがない。

さて、その「しのぶ」。
開店後しばらく行列が見られたが
このところ落ち着いてきたので参上仕った。
店頭の立て看板にポルチーニ香る塩らぁ麺を見て
ポルチ好きは狙いを定めていた。

850円のそれと390円の一番搾り生中をポチッ。 
カウンター、テーブル2卓合わせ、
15席ほどのキャパである。
正午を過ぎても、さほど来店者はいなかった。

待つこと5分少々、
ほう、モダンなルックスがいいヨ。
ポルチーニもちゃんと香ってる。

豚肩ロース&鶏ムネ肉、チャーシューは2種。
細長い穂先シナチク1本。削りポルチーニ、
そしてねぎの青い部分の細切りは
白髪ねぎならぬ、緑髪ねぎである。

古来、この国では乙女の美しい黒髪を
緑の黒髪と言い表す。
お~っと、小林旭が歌い出した。

♪   君がさやけき 目の色も
  君くれないの 唇も
  君が緑の 黒髪も
  いつかまた見ん この別れ  ♪
   (作詞:島崎藤村)

藤村翁、さすがであります。
中央大学の学生歌でもある「惜別の歌」。
さまざまな歌手がレコーディングしており、
倍賞千恵子、ちあきなおみ、舟木一夫、
みなそれぞれに良かりしが
何といっても小林旭にトドメを刺す。

あの頭のてっぺんから突き抜ける高音が
この歌に色褪せぬ息吹を吹き込んでいるのだ。

=つづく=