住まいの近所に美味しいラーメン店がない。
富山出身の老夫婦営む「砺波」が数年前に
閉業してしまい、界隈は不毛地帯と化した。
よって、食べたくなったら鶯谷まで出向いている。
先月のアタマ、団子坂下に「しのぶ」が開店。
テリー伊藤とワタミグループがタッグを組んだ、
「から揚げの天才」が撤退した跡地だ。
都内に限らず、あっちゃこっちゃに
すさまじい開店ラッシュを仕掛けた「天才」は
今や目も当てられぬ凋落ぶり。
他のから揚げチェーンもおおむね苦戦続きだが
から揚げだけで商機をつかめるはずがない。
さて、その「しのぶ」。
開店後しばらく行列が見られたが
このところ落ち着いてきたので参上仕った。
店頭の立て看板にポルチーニ香る塩らぁ麺を見て
ポルチ好きは狙いを定めていた。
850円のそれと390円の一番搾り生中をポチッ。
カウンター、テーブル2卓合わせ、
15席ほどのキャパである。
正午を過ぎても、さほど来店者はいなかった。
待つこと5分少々、
ほう、モダンなルックスがいいヨ。
ポルチーニもちゃんと香ってる。
豚肩ロース&鶏ムネ肉、チャーシューは2種。
細長い穂先シナチク1本。削りポルチーニ、
そしてねぎの青い部分の細切りは
白髪ねぎならぬ、緑髪ねぎである。
古来、この国では乙女の美しい黒髪を
緑の黒髪と言い表す。
お~っと、小林旭が歌い出した。
♪ 君がさやけき 目の色も
君くれないの 唇も
君が緑の 黒髪も
いつかまた見ん この別れ ♪
(作詞:島崎藤村)
藤村翁、さすがであります。
中央大学の学生歌でもある「惜別の歌」。
さまざまな歌手がレコーディングしており、
倍賞千恵子、ちあきなおみ、舟木一夫、
みなそれぞれに良かりしが
何といっても小林旭にトドメを刺す。
あの頭のてっぺんから突き抜ける高音が
この歌に色褪せぬ息吹を吹き込んでいるのだ。
=つづく=