2022年12月5日月曜日

第3160話 夜明けのビールと日の丸弁当

いやあ、逆転してからの44分は実に長かった。
ホイッスルが鳴ってガッツポーズ。
さァ、祝杯を挙げよう、プシュー!
夜明けの缶ビールである。
2缶飲み干し、3缶目、
ついでに朝めしも食べちゃおう。

日の丸を振りたいけれど、家にそんなモンない。
代わりに思いついたのが日の丸弁当。
コンビニで買った白飯パックをチンして
ど真ん中に梅干しという名のゴールを決めた。

それではスペイン戦を振り返ろう。
J.C.は立ち上がり5分で唖然、茫然。
相手の圧倒的なキープ力による、
自信に裏打ちされた完璧なパスワーク。
前半に押し込まれるのは覚悟の上だが
まさかここまでとは!

彼我のあまりの差に心がくじけた。
そこへ頭二つぶん高いヘディングがズドン!
0-7の再現かァ? だめだ、こりゃ!

おまけに麻也が警告を受ける始末。
すごい剣幕でレフェリーに抗議したが
気持ちは痛いほど判る。
あの程度でイエロー切られたひにゃ、
ディフェンダーはやってられん、お手上げだ。

もっとも手を使えぬサッカーは
ハナからお手上げなんだけどネ。
麻也のプレーはイエローどころか
ファウルを取らずに流すレフェリーも
少なくないんじゃないかー。

”前からいこう” を合言葉に後半が始まった。
具現化を成し遂げたのは
前がかりの前チャンこと、前田大然。
前半こそ相手GKの巧みな足技にかわされ続けたが
ナメんじゃねえゾと言わんばかり、とうとう捉えた。

あわてたGK、一瞬パニック。
パスともクリアともつかぬボールを蹴り上げたぜ。
ずうっとグラウンダーでつないでいた奴さん、
いや、焦った、焦った。

そこを身体を張って競り勝った伊藤純也。
ナイスプレーである。
素早く反応した堂安が豪快に決めた。
通常、GKはシュートコースを予測する際、
キッカーの軸足のつま先を見るもの。
つま先の向く方向に球は飛んで来るからネ。
高低までは読めなくとも方向は判る。
実際に堂安の右つま先はゴールの右を向いていた。

GKはその基本を怠った、というより余裕がなかった。
反応が遅れ、ゴールを割られてしまう。
GKの手はボールをはじくためのもの。
あの一撃は逆にGKの手をはじき飛ばした。
しかも両手をだ。
両手に触れながらの失点は極めて稀なケースだ。

そして訪れた逆転劇。
天国と地獄の境界線は2ミリ足らずのものだった。
日本にとっては神のご加護、
スペインには神のいたずらとしか思えまい。
5分間のスペイン版パニック劇場。

それにしても三苫って選手は型破り。
オフェンスもさることながら
ディフェンスがすばらしい。
どちらも華麗にこなす選手は
日本サッカー史上初めて、他に知らない。
真の二刀流はピッチ上の大谷翔平そのものだ。

もう1戦、いや2戦、いやいやもっとかも?
今夜また楽しめるシアワセを噛みしめよう。
去り行くドイツ、どうにか残ったスペイン。
「ありがとうドイツ、よくそ勝ってくれました!」
「それはないぜスペイン、せめて引き分けろヨ!」
両者言葉を交わす運命の分かれ道。

「サッカーにはドラマがある」
56年前、母国の優勝を目の当たりにして
エリザベス女王が残した言葉である。