2014年6月30日月曜日

第870話 シンガポールの四人の仲間 (その2)

34年も前の思い出話で恐縮なれど、
その夏、初めてシンガポールを初めて訪れたのだった。
第二次大戦時、日本の占領下では
昭南島と呼ばれたマレー半島の突端の小さな島国である。

現地のスタッフが休憩時間に興ずる、
5スタッドポーカーを観ていて
あいや、実際に参戦もしたが、いささか退屈に過ぎる。
そこで機会をみて進言した。

「Stop the 5, Let's play the 7!」

プレイヤーの手札を5枚から7枚に増やし、
その7枚のうち、任意に5枚を使って手役を作るのだが
ベットの機会の絶対数が増えるわけだから
おのずと賭け金はふくらみ、
必然的にギャンブル性は高まる。
ご興味のある方は”ポーカーの種類とルール”をググってください。

以来、オフィスで5スタッドをプレイするものは誰もいなくなった。
7スタッドが一世を風靡したのだ。
麻雀において東風戦に手を染めると
まだらっこしい東南戦にはもう戻れないのと同じことである。

シンガポールでは人口の7割以上を中国系が占める。
マレー系、インド系、ユーレシア(ユーロ・アジア)があとに続くが
中国系のギャンブル好きはつとに有名。
日本人のように賭博に対する嫌悪感や拒絶の姿勢が
中国人にはまったくないと言ってよい。
もちろんギャンブル嫌いのチャイニーズも少なくないから
あくまでも相対的なハナシではあるけれど―。

数年後、シンガポールに赴任した。
そのときこんなことがあった。
交流のある日本人の仲間が
夫婦揃っての食事会を催した。

会食後、誰が言い出したのか
二次会はボーリングと相成った。
まあ、ゾロゾロと大人数でバーやラウンジに押しかけるよりも
ずっと気が利いている。

何組かに分かれて気楽にピンを狙うわれわれのうしろに
数人の現地人が集まりだした。
どこか得体の知れないグループで、ちょいと異様な雰囲気が漂う。
そのうち奥さんたちが気味が悪いと騒ぎ始めた。

放っておくわけにもいかないから
意を決したJ.C.、連中のもとへ歩み寄って問い質す。
その結果、返って来た言葉にしばし言葉を失うこととなる。
何と、彼らは赤の他人のわれわれのスコアに注視して
右のペアが勝つのか、はたまた左のペアが勝つのか、
勝手に賭けていたのであった。

中国人のギャンブル好き、ここに極まれり!
そう思ったことでした。