2014年6月12日木曜日

第858話 或る夜突然 (その3)

 ♪ 遠い北国の森 愛の泉があった
   その泉の前で 二つの影は出会う
   水鳥たちが遊ぶ 愛の花咲く岸辺
   その泉の前で 愛は結ばれる

   若者は少女に 首飾りを贈った
   それはそれは 二人だけの愛のしるし
   二人が歌い出せば 魚たちが踊った
   二人が泣いた時 泉は嘆いた

   夢の中で少女は 若者の胸に
   二つの二つの 白い鳥は空に消えた
   遠い北国の森 愛の泉があった
   今そこに残るのは 愛の首飾り
   愛の首飾り 愛の首飾り

        (作詞:渡辺隆己)

これがトワ・エ・、モワで一番好きな「愛の泉」。
メロディー抜きだと実感が伴わずに残念。
でも、この機会に you tube か何かで、試聴してみてください。

おそらく彼らのナンバーではもっともアップテンポ。
スローバラードが多い中で異例中の異例だ。
J.C.はテンポの速いマイナーコードの曲調が大好物。
「君恋し」、「恋のバカンス」、「好きになった人」、「よろしく哀愁」、
「迷い道」、「異邦人」、「私はピアノ」、「誘惑」、
「さよならイエスタデイ」、みんないいねェ。
あまり知られていないが
加藤登紀子の「歌いつづけて」なんか、もう、たまらなく好きだ。
今でも聴くたびにインタールードのピアノには胸がふるえる。

「愛の泉」はきわめてメルヘンチックな曲。
歌詞から連想される第一感はチャイコフスキーのバレエ、「白鳥の湖」、
あるいは「眠れる森の美女」だろうか。
われわれの世代の日本人ならブルコメの「ブルー・シャトー」かな?
クラシックファン、それもオペラに造詣の深い向きは
ワーグナーの長編、「ニーベルングの指輪」(通称・リング)の第一話、
「ラインの黄金」を思い浮べることだろう。
グループサウンズ全盛期に思春期を迎えたJ.C.は
寺尾聰が参加していたザ・サベージの「哀愁の湖」がピンときた。

リズミカルなイントロで始まる美しいメロディーを
二人のハーモニーが高みに導いてゆく。
「愛の泉」にはもっとヒットしてほしかったし、
トワ・エ・モアももっと歌い継がれてほしい。

ところで「愛の泉」を作詞した渡辺隆己は作曲も担当している。
トワ・エ・モアのナンバーで
作詞・作曲を独りでこなすケースはまれだが
作者は今、どこでどうしているのだろう。
皆目見当がつかないけれど、感謝の気持ちを捧げたい。

  ♪  空よ 教えてほしいの
   あの(人)は今 どこにいるの ♪
         (作詞:難波寛臣 )

=おしまい=