2014年7月31日木曜日

第893話 連れて帰った黄金虫 (その4)

 ♪ おらは死んじまっただ
   おらは死んじまっただ
   おらは死んじまっただ 天国に行っただ
   長い階段を 雲の階段を
   おらは登っただ ふらふらと

   おらはよたよたと 登り続けただ
   やっと天国の門についただ
   天国よいとこ一度はおいで
   酒はうまいし 
   ねえちゃんはきれいだ
   ワーワーワッワー     ♪
    
   (作詞:ザ・フォーク・パロディ・ギャング)

黄金虫は死んじまったが帰って来た。
もちろん死んだヤツが生き返るわけはないからベツの個体だ。
仮に前話の主役を黄金虫1号としようか。
となると、こちらは黄金虫2号である。

1号が永眠して二日後の朝、
家を出たらドアの外に1号に瓜二つの2号の姿があった。
あらら、こんなところにまたもや黄金虫。
「どうしたんだヨ、オマエ?」―そう、問いかけたい気持ち。

こう、たびたび見掛けたんではねェ。
仕舞いにゃ、家に押し掛けられたんではねェ。
 いやはやたまったもんじゃないゾ!
なんてことはまったくなく、
来るモノ拒まず(オンナはその限りに非ず)主義のJ.C.は
歓迎の意を表して、さっそく拙宅に招き入れた。

今、出たばかりの主(あるじ)がいきなり舞い戻ったものだから、
見送りに出ていたウチの猫がキョトンとわれわれを見ている。
これがホントの招き猫ですがな。
すでに愛猫・プッチは1号と戯れた過去があるから二の轍は踏まない。
興味深げに眺めているだけだ。

取りあえず例の蜂蜜を深めの皿に垂らし、
その皿を2号の仮住まいとした。
もちろん猫の手のとどかない、安全地帯に置いてネ。

その日はずっと外で、帰宅したのは23時過ぎ。
2号の様子をうかがうと、おとなしく皿に収まっているじゃないの。
ごほうびにキュウリのスライスを進呈してみた。
すると、よく食べるんだな、これがっ!
キュウリにまたがる黄金2号
2、3日、そんな生活を送っていた2号だったが
いつの間にかいなくなった。
黄金虫は金持ちかもしれんが、移り気でもあるんだなァ。
でも、どうやって外に出たんだろう?
ひょっとしてベッドの下か本棚の奥で
屍(しかばね)になっていたりして―。

=おしまい=