2014年10月9日木曜日

第943話 秋の日の厨房 (その2)

厨房に入ったのは終日、
家にステイしなければならない日であった。
閉じこもっていても腹はへるからメシは食わにゃならない。
となったら昼夜ともに自炊を決め込む。
ここ十数年、出前は取ったことがないからネ。

この日に備えて前夜のうちに買出し。
自宅からそう遠くないスーパーマーケットに出向いた。
おや? ずっと高値止まりしていた生鮮野菜がずいぶん安くなっている。

まずは野菜からと、買い求めたのは、
なす・ピーマン・トマト・きゅうり・レタス。
豚のバラ肉の薄切りも買った。

翌日、朝早く起きて一仕事終えたときはすでに10時半。
米を磨(と)ぎ、惣菜の仕込みに入る。
昼めしの献立はかくの如し。

 豚バラ・なす・ピーマンの鉄火味噌
 納豆 豆腐とレタスの味噌汁 

鉄火味噌は亡き母親の得意料理で
子どもの頃からさんざん食べさせられた。
作り方はきわめて簡単。

中華鍋に油(わが家では胡麻とコーン半々)を引き、
なすとピーマンを炒め、砂糖を振り掛ける。
一度野菜を取り出し、洗わぬ鍋で豚バラにサッと火を通す。
野菜を戻して日本酒で溶いた信州味噌を投入し、
しっかり混ぜ合わせれば出来上がり。

めしのオカズによし。
ビール・日本酒・赤ワインにもピッタリ。
中国料理に回鍋肉あらば、日本料理に鉄火味噌あり!
なのである。

納豆はスーパーだか、コンビニだかで買い置いたヤツ。
賞味期限を2週間も過ぎている。
それを食べたのだ。
読者の中には、ゲッ! と思われる方もおられよう。

フフッ、旨いんだなコレがっ!
殊に柔らかめの納豆には効果を発揮する。
豆に歯ごたえが生まれ、ちょうどよくなるのだ。
買い立てのモノに比べ、風味もずいぶんと増している。
腐敗と発酵は紙一重、食いモンは上手に食いましょう。

レタスの味噌汁ってのはあんまりパッとしない。
これは夕食時ににサラダを食べようと思って
買ったレタスの転用に過ぎない。
男やもめがレタスを丸ごと買っちまったら往生する。
よって苦肉の策と相成ったワケ。
外側の青い葉を胡麻油で炒め、豆腐の味噌汁に落とし込んだ。

炊き立ての宮城米を1膳半いただき、
とっても美味しいランチでございましたヨ。

=つづく=