東大安田講堂地下の広大な中央食堂に降りた。
なかなかのスペクタクルなシーンが拡がっている。
味はさて置き、見掛けだけは日本一の学食ではなかろうか?
ここへ来ると必ず思い出すのが
マンハッタンは東18丁目9番地のアメリカン・バー&レストラン。
その名も「AMERICA」だ。
あの空間に身を置いてグラスを重ねるのが好きだった。
一番奥はせり上がったステージのごとくに設らえられたバー。
このカウンターこそマイ・ホームグラウンドであった。
ここでわが毒牙にかかった乙女は数知れず。
なあ~んてネ。
♪ なんてね 淋しい ♪
おっと「DESIRE」は昨日やった。
東大中央食堂に戻ろう。
遠来の友を案内したのはいいが
ちょうど昼めしどきにつき、順番待ちは長蛇の列だ。
見ただけでウンザリしてしまい、食欲が失せる。
食堂に未練を残してうらめしそうな相方をなだめすかし、
通ったばかりの正門を逆に出た。
はて、どこへ行ったらよかんべサ?
第一感は本郷菊坂下の「海燕」である。
たまに立ち寄るロシア料理店ながら、いささか距離がある。
でもねェ、近場の東大前にはコレといった店がないのよねェ。
東大生に支持されているという「もりかわ食堂」はイマイチだし、
フルーツパーラー「万定」、
あるいは喫茶店「ルオー」のカレーライスじゃなァ・・・。
第一、両方ともちっとも旨くないんだ。
かように東大前の食レベルは低い。
行きたいと思う店が皆目見つからないもの。
時間的制約があるから、そうのんびりとしてもいられない。
苦肉の策で選んだのは日本そばの「まるそ」。
実はこの店、数年前に一度訪れており、
そのときの評価はけして高いものではなかった。
東大正門前の本郷通り沿いには繁盛している店がほとんどない。
そんな環境下で生き延びているのだから
それなりの進化を遂げているかもしれない。
淡い期待を抱いて喫茶店風の店内に入った。
昼のピーク時だからか、あるいは評判がよいからか、
にわかに判断しかねるが、ほぼ満席の盛況ぶりである。
ほほう、なかなかじゃないのと一安心。
いや、ちょいと待てヨ、ここで胸のうちに暗雲が拡がり始めた。
=つづく=