2014年10月28日火曜日

第956話 よこはま・たそがれ 酒場のはしご (その7)

たそがれの横浜ではしご酒を楽しんでいる。
舞台は岩亀横丁、「市民酒場 常盤木」だ。
前話でふれた店にまつわる違和感だが
店内の雰囲気が期待というか、予想とはまったくの真逆、
都内ならどこにでもありそうな、
ごくごくありふれた何の変哲もない居酒屋然としているのだ。

時代遅れのすばらしき酒場、
「みのかん」から流れて来たせいもあろう。
でもネ、落差の激しさにとまどい、
もの足りなさを感じてしまう自分がいる。
岩亀横丁随一の酒場でありながら
J.C.的には”横丁抜群、酒場それなり”でしかないのだ。

気を取り直して壁に貼りめぐらされた短冊を見やる。
例によってみなさんのお目に掛けておこうか。

 自家製新香 200円  ポテトサラダ ニラ天 しらすおろし 各300円
 枝豆 いか塩辛 玉葱フライ 各350円  シューマイ 小肌酢 各400円
 野菜天 いかかき揚げ あじフライ ニラ玉子焼き もつ煮込み 各400円 
 さば塩焼き ねぎチャシュー 各450円  まぐろブツ ミックスフライ 各500円

てなところ。
気になったのはまずニラ天で女将に訊ねると、
「ニラの天ぷらです」とのお応え。
まっ、そりゃそうでしょうヨ。
くわえて事前調査ではシューマイが名物と聞いており、
以上2品をお願いする。
世にも珍しいニラ天
これがサックリと揚がって実に軽妙な歯ざわり、
まことにけっこうでありました。
「常盤木」名物のシューマイ
この日の昼に食べた「廣州亭」のそれよりずっとなめらか。
相方ともどもコチラに軍配を挙げた。
訊けば店主は横浜中華街で修業を積んだとのことだ。

店内は徐々に立て混み始めた。
カウンター4席、テーブル4人掛け4卓の8割方が埋まった。
界隈の人気店であることに間違いはない。

相方に何かもう1品選ぶようにいうと小肌酢を選んだ。
もちろんひかりモノは好きだから異存はない。
異存はなかったが運ばれ来たるブツを一べつして
胸の置くからクエスチョンマークがプッカリ浮かびあがった。

小肌は言わずと知れた出世魚。
 シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロ
以上の順で成長とともにその名を変える。
ところがであった。

=つづく=