シンガポール赴任時代の旧友・T栄サンと
およそ30年ぶりの再会を果たしている。
北区在住の相方に好都合と思い、
赤羽で落ち合って東口駅前の「まるよし」に来た。
細長いコの字形カウンターのちょうど左奥にスペースができ、
無事に収まることができた。
サッポロ黒ラベルの大瓶を互いに注しつ注されつして乾杯。
山ほど積もる話の前に、つまみの注文をしておこう。
ここの名物は何たって、もつ焼き(焼きとん)だ。
1種1本から受けてくれ、それが各80円と格安。
優良店の証しがこれである。
焼きとんなんて食べたことはあるけれど、
それがいつだったかまったく覚えていないという困り人のT栄サン。
ここで見放しては哀れを誘うため、簡単なガイダンスを施して差し上げた。
とりあえず、カシラ・レバ・シロを1本づつタレで焼いてもらう。
カシラは塩のほうがおすすめながら
たかだか3本のしみったれた注文で
塩・タレの分別は大衆酒場の流儀に反する。
すると、カシラのタレ焼きがことのほかお気に召した様子じゃないか―。
J.C.すかさず焼き手にお願いした。
「カシラを塩とタレでもう1本づつ焼いてちょうだい!」―
せっかくだから塩焼きも味わってほしかったのだ。
ともに210円のオニオンスライスとせりおひたしを同時注文。
「まるよし」の特徴はつまみ類の安さで
まあ、そのぶん酒はそんなに安くはないんだけどネ。
それでもビール大瓶が600円だから大衆価格ではある。
せりおひたしの注文の際、目の前のオニイさんがオウム返しに
「せり? せりですかァ? せりはあったかな・・・」―
ちゃんと壁の品書きに明記されているのに
トンチンカンな応対である。
オニイさんといってもすでに中年、50代に突入しているなこりゃ。
会話を耳にした彼の隣りのオバはん(女将かもしれない)が
強い口調でたしなめたネ。
「ほら、品書きにあるじゃない、駄目ダメ、しっかり見なきゃ!」―
なんかケツを引っぱたきそうな勢いだ。
ちなみに季節を迎えたせりはこの日からの新メニューだとサ。
気がつかないワケがここにあった。
その後もこのコンビは常に、♀が♂を叱り飛ばす。
われわれは苦笑しながらそのやり取りを聴くともなしに聴いていた。
いったいこの店のスタッフの相互関係はどうなってるんだろうねェ。
とにかく一段落した二人、
思い出話の詰まった玉手箱の紐をおもむろに解いたのであった。
=つづく=
およそ30年ぶりの再会を果たしている。
北区在住の相方に好都合と思い、
赤羽で落ち合って東口駅前の「まるよし」に来た。
細長いコの字形カウンターのちょうど左奥にスペースができ、
無事に収まることができた。
サッポロ黒ラベルの大瓶を互いに注しつ注されつして乾杯。
山ほど積もる話の前に、つまみの注文をしておこう。
ここの名物は何たって、もつ焼き(焼きとん)だ。
1種1本から受けてくれ、それが各80円と格安。
優良店の証しがこれである。
焼きとんなんて食べたことはあるけれど、
それがいつだったかまったく覚えていないという困り人のT栄サン。
ここで見放しては哀れを誘うため、簡単なガイダンスを施して差し上げた。
とりあえず、カシラ・レバ・シロを1本づつタレで焼いてもらう。
カシラは塩のほうがおすすめながら
たかだか3本のしみったれた注文で
塩・タレの分別は大衆酒場の流儀に反する。
すると、カシラのタレ焼きがことのほかお気に召した様子じゃないか―。
J.C.すかさず焼き手にお願いした。
「カシラを塩とタレでもう1本づつ焼いてちょうだい!」―
せっかくだから塩焼きも味わってほしかったのだ。
ともに210円のオニオンスライスとせりおひたしを同時注文。
「まるよし」の特徴はつまみ類の安さで
まあ、そのぶん酒はそんなに安くはないんだけどネ。
それでもビール大瓶が600円だから大衆価格ではある。
せりおひたしの注文の際、目の前のオニイさんがオウム返しに
「せり? せりですかァ? せりはあったかな・・・」―
ちゃんと壁の品書きに明記されているのに
トンチンカンな応対である。
オニイさんといってもすでに中年、50代に突入しているなこりゃ。
会話を耳にした彼の隣りのオバはん(女将かもしれない)が
強い口調でたしなめたネ。
「ほら、品書きにあるじゃない、駄目ダメ、しっかり見なきゃ!」―
なんかケツを引っぱたきそうな勢いだ。
ちなみに季節を迎えたせりはこの日からの新メニューだとサ。
気がつかないワケがここにあった。
その後もこのコンビは常に、♀が♂を叱り飛ばす。
われわれは苦笑しながらそのやり取りを聴くともなしに聴いていた。
いったいこの店のスタッフの相互関係はどうなってるんだろうねェ。
とにかく一段落した二人、
思い出話の詰まった玉手箱の紐をおもむろに解いたのであった。
=つづく=