2015年3月17日火曜日

第1056話 なんとなくエスニック (その2)

文京区・千石の白山通り沿い。
歩行する足を止めたのはこの写真であった。
スペシャル・ダンパウなる米料理
ダンパウとは初めて目にするディッシュである。

レストランは「TAWARA」という名のミャンマー料理店。
韓流バブル弾け散ったコリアンタウン新大久保には
ミャンマー料理屋が増殖しているらしいが
あの街は自分の縄張り外なのでめったに足を踏み入れない。

何年か前、週末のランチタイムに
JR大久保駅そばのミャンマー料理屋に飛び込んだら
何やら店内で宗教的な儀式が執り行われており、
相方ともども逃げ帰ったことがあった。
まさかサリンを散布されることはなかろうが
いや、不気味なことこのうえなかった。
もともと宗教は苦手の口だからネ、くわばら、くわばら・・・。

千石の「TAWARA」に戻ろう。
写真で見る限り、スペシャル・ダンパウは
インドのチキン・ビリヤニに似てないこともない。
違いといえば、ビリヤニがややウェットな感じなのに対して
ダンパウはかなりドライなこと。
炒飯・ピラフ・パエリャの類いはみな好きだから
この米料理も試してみたくなった。

当夜は別段、目指す店があるでもなく、
なんとなくエスニックにしちゃおうかな・・・てなフィーリング。
空を見上げれば月がとっても青かった。
ルナが呼んでいる。

入店すると先客は皆無。
切盛りする若い男女は夫婦者だろう。
「いらっしゃいませ!」の声がハモッた。
二人ともミャンマー出身のようだ。
事実、確認したらミャンマー人だった。

「スペシャル・ダンパウできますか?」
「ハイ、できますよ」

「ビールもらおうかな」
「ミャンマーのビールありますよ」

「タイのビールみたいにクセがあるんじゃない?」
「いえ、さっぱりしてますよ」

「中瓶か大瓶ある?」
「小瓶だけなんです」

「小瓶はすぐなくなっちゃって飲んだ気がしないんだ」
「前は中瓶あったんですけど―」

「まぁいいや、小瓶ください」

こんな会話が店主と交わされたのだった。
もちろんランゲージは日本語で―。

=つづく=