2015年3月4日水曜日

第1047話 天丼はどんぶりの王者 (その5)

  ♪ 思い出の夜は 霧が深かった
   今日も霧がふる 万代橋よ
   別れの前に 抱きしめた
   小さな肩よ ああ ああ
   新潟は 新潟は 面影の街 ♪
   (作詞:水沢圭吾・山岸一二三)

いきなりの「新潟ブルース」は1967年のリリース。
歌ったのは美川憲一だから
「アンタ、もうちょっと真面目にお書きなさいヨ!」―
なあんて言われちゃいそうだが
「まっ、アタシの曲だから許してあげるワ」―
てなことにもなりそうである。

「新潟ブルース」の登場にはワケがある。
実は前話を読まれたS藤サンからメールをいただいた。
彼女は新潟県・新潟市にお住まい。
だからどうした? 問われればそれまでながら
スルーして先をお読みくだされ。

S藤サン問うて曰く、
「私はかぼちゃの天ぷらが大好物なのですが、J.C.さんは?」―
とのことである。

マイ・フェイヴァリット天種は下記の通りです。

 魚介類ベスト5・・・桜海老 穴子 銀宝(ギンポ) 白魚 めごち 
 野菜類ベスト5・・・絹さや 小玉ねぎ いんげん 小茄子 せり

したがってマイ・ベストは
釜揚げ桜海老と新玉ねぎのかき揚げでござんす。   

逆に嫌いとは言わないまでも
好んで注文しない筆頭格はグリーンアスパラ。
あとは椎茸とかぼちゃ(S藤サンごめんなさい)。
子どものころ大嫌いだったさつま芋はここ数年、好きになっている。

さて、さて、「てんや 白山店」の早春丼である。
期待以上の美味しさに笑みをこぼしながら
ごはん粒は努めてこぼさずに完食に及んだ。

食べ終えて、唯一の疑問は子持ち白魚だ。
季節商品とはいえ、チェーン展開している店が
かなりの長期に渡り、供給し続けている。
いったい狭い日本のどこに
そんなマネのできる産地があるというのだろうか。

カウンター内で忙しく立ち働いている女性スタッフに訊ねてみた。
一瞬、返答に窮して固まってしまった彼女、
店長だかマネージャーだか、とにかく上司のもとに走った。
舞い戻っての答えは予想通りに中華人民共和国であった。
中国のどこかまではついに判明しなかったが、いや、美味しかった。
中国製冷凍食品の点心類は買う気がしないけれど、
この白魚はよかった。

お好み単品だと150円の子持ち白魚でビールを飲むつもりで
今度は「てんや 巣鴨店」を訪れると、
すでに白魚の姿なく、その役を桜海老に取って代わられていた。
前記の通り、桜海老は大好物ながら、ここの桜チャンには力がない。
真っ当な駿河湾産桜海老はかなり高価だから
「てんや」では使いこなせまい。
安価な中国産白魚だからこそ生まれた優れメニューだったわけで
これは致し方あるまい。

とまれ、早春丼、まことに美味しゅうございました。
かつ丼・うな丼・鉄火丼、みな好きだけど、
天丼こそがどんぶりのチャンプでありまっしょう。

=おしまい=

「天丼てんや 白山店」
 東京都文京区本駒込1-2-3
 03-5689-4681