幸薄そうなハーフの小学生、ジョージと焼肉を食べた数日後。
本郷の東京大学で所用を済ませ、
弥生坂を下りきって根津の交差点である。
ときは正午過ぎ、まさに昼めしどきだ。
リピーターではなかったJ.C.だが近年はリピート率が上がっている。
身を置いて心安らぐ場所がほしくなったのだろう。
行動範囲も狭まってきたし、
寄る年波というヤツであろうか・・・。
行きつけの日本そば店、池之端の「新ふじ」までは徒歩3分。
この日は午後にもミッションを抱えており、
昼から飲むつもりは毛頭ない。
もりそばか中華そばをサクッとやるだけでよいのだ。
ちなみに「新ふじ」の中華そばはなかなかである。
子どもの頃からの経験に基づけば、
日本そば屋における中華そばは当たりの確率が高い。
概して支那そばに源流を求める古典的なスタイルが多く、
根っからのラーメン好きを大きく裏切ることがない。
近頃流行りの煮干しの匂いがプンプンするヤツ、
いや、煮干しだけならまだしも魚粉の悪臭漂うヤツ、
挙句の果てはさらに魚粉をぶっ掛けちゃうってんだから
もう人間の食いモンではないわな。
魚粉なんてもともと作物のための肥料じゃないの。
われわれ人類は生き物であって、田畑(でんばた)には非ず。
でもって「新ふじ」に到着。
ありゃりゃ、珍しくも店先に3人の客が順番を待っている。
それもそうだヨ、一番混雑する時間帯だもんネ。
こりゃ、中を覗くまでもあるまい。
即、あきらめた。
このまま不忍通りを真っ直ぐ行って湯島に向かうか、
不忍池の遊歩道を突っ切って上野方面に抜けるか、
しばらく思案をめぐらす。
決断して今来た道を引き返すことにする。
根津の交差点を右折し、言問通りに入ってすぐ、
入店したのは「中華オトメ」である。
ここ数年、料理人が替わりでもしたのだろうか、
味が落ちている町の中華屋ながら
久しぶりに五目焼きそばを食べる気になっていた。
すると、ここでも空席が見つからない。
根津神社のつつじ祭りはとっくに終わったのに
界隈は熟年層が押しかけてきて
夫婦仲良く揃い、散策にいそしむ姿が目立つ。
ご同慶の至りなれど、いや、マイッたぞなもし。
またもや「オトメ」をあきらめ、周辺の物色に及ぶ。
交差点にほど近く、献立を記した立て看板に目がとまった。
=つづく=