2015年6月12日金曜日

第1119話 さしともと飲んだべサ (その1)

わが友だちは千差満別、多種多彩。
のみとも・めしとも・うたともに加え、さしとも・うちともまでいる。
 何だソレ? ってか?
指しともは将棋のお相手、
打ちともは麻雀卓を囲む仲間、いわゆるポン友だ。

或る土曜の昼過ぎだった。
当ブログにいくたびか登場しているK子老人よりケータイに着信あり。
ちなみにK子は女性のファーストネームではなく、男性のサーネームだ。

例によって、ヒマならば即刻やって来いとのお達しだった。
 いやはや、お年寄りには太刀打ちするすべがございませんな。
言い出したら最後、聞く耳というものを持たないんだから・・・。
そういう意味では幼児と変わるところがない。
昔の年寄りのほうがまだ聞き分けがよかったような気がする。

でもって結局は薬局、遠征して行きました。
地下鉄に乗って到着すると、
なぜかビールとつまみの用意がされておる。
しかも冷えたビールは当方の好みの銘柄ときたもんだ。
まずは飲みなはれ、ということなんだろうが
こんな心配りは初めてのことである。

はは~ん、酔わせてたたこうという腹積もりかもしれないな?
そう思いながらも嫌いなほうじゃないから
策略にのったフリをして駆けつけ三杯に及んだ。
フ~ゥ、昼のビールは効くねェ。
こいつはほどほどにしておかないとトンデモないことになるゾ。

麻雀なら飲みながら打てるが
将棋はアルコールが入るとなかなかに厄介。
思考能力がガクンと落ちて
一手、二手ならともかくも、数手先までは読めなくなってしまうのだ。

え~い、面倒だ、どうにでもなれ!
厚いほうじ茶をすする老人を尻目に
こちらは冷たいビールをなおも飲りながら
取りあえず盤上に駒を並べた。

夕方の5時まで何局指したか記憶にないが結果は大きく負け越し。
ひと昔前からプロの女流棋士のあいだで流行りだした、
ゴキゲン中飛車戦法にこっぴどくやられてしまった。
こりゃ知らないまに、かなり研究を重ねたに違いない。
次回はこちらも何か新手で挑むしかなさそうだ。
松尾流のイビ穴で王様を囲ってみようかな?

戦いすんで日が暮れて、
いつもならこのまま一人でおいとまするところなれど、
当夜の老人は晩酌に連れて行けとホザいたではないか。
夜早く寝て朝早く起きる老人にしては珍しいこともあるもんだと思いつつ、
二つ返事で諒としたJ.C.でありました。

=つづく=