浅草すし屋通りの気に入り店、
「三岩」に旧友と差し向かいながら
「三岩」に旧友と差し向かいながら
必注品のにしん酢の仕上がりがいまひとつでマイッたぞなもし。
あらためて品書きを手に取り、思案をめぐらせる。
「あっ、そうだ!さらしくじらって食べたことある?」―訊ねると
「聞いたことはあるけど、それ、何だっけ?」―と、こうきたもんだ。
こりゃ、是が非でも食してもらわにゃなるまい。
しかもこういった小品はすぐに出てくるのがありがたい。
にしん酢同様にさらしくじらも
ほとんど絶滅状態となった今日この頃。
若い読者の中には、ご存じない向きもおられよう。
分厚いクジラの皮脂を熱湯で脂抜きし、
水に晒したものだが、通常は辛子酢味噌でいただく。
別名はオバイケ、それがなまってオバケとも―。
水に晒したものだが、通常は辛子酢味噌でいただく。
別名はオバイケ、それがなまってオバケとも―。
変わったところでは浅草の「駒形どぜう」だ。
はとバス御用達の当店では小鍋仕立てを供する。
供するけれど、熱を通すとさらしくじらに
独特のクセが出てしまい、あまりオススメしない。
人気商品ともいえず、今でも品書きに載っているかどうか・・・。
しばらく訪れていないので判らない。
はたして「三岩」のクジラ君は
オーソドックスな辛子酢味噌を 頭から掛けられて登場した。
経験上、白味噌が主流と承知しているが
ここでは赤味噌が使われている。
砂糖の甘みも他店より控えめだ。
一箸つけた相方は
「へぇ~っ、オツな味ですねェ」ー いたく気に入られたご様子。
「ハナシの種に一度は食べといて損はないでしょ?」―と、J.C.。
この辺りで瓶ビールからデンキブランに移行した二人である。
デンキブランは同じ浅草のランドマーク「神谷バー」が発祥の地。
ブランデーにジン、そこにワインやキュラソー等々を配合したものだが
一口すすっての第一感はイタリアン・ヴェルモットのそれだ。
チンザノやガンチアの赤を感じさせる。
したがってかなり甘口。
ただし、アルコール度は30度に達するから
調子に乗って”連杯”すると、あとで脚にくる。
殊に甘いもの好きな女性には危険な酒と言えなくもない。
ニシンとクジラだけではあまりにもの足りない。
メニューとにらめっこしていた J.C.、ふと気がついた。
「三岩」に来るのは秋口から冬にかけてなんだと―。
いつもたらちりやかき鍋を突つきながら燗酒を飲んでいたのだ。
この時期ならほとんど「神谷バー」に直行だもんネ。
=つづく=
はとバス御用達の当店では小鍋仕立てを供する。
供するけれど、熱を通すとさらしくじらに
独特のクセが出てしまい、あまりオススメしない。
人気商品ともいえず、今でも品書きに載っているかどうか・・・。
しばらく訪れていないので判らない。