2017年2月22日水曜日

第1564話 素晴らしき土曜日 (その18)

千駄木の「毛家麺店」に流れ出した歌声。

  ♪   嫌われてしまったの 愛する人に
     捨てられてしまったの 紙クズみたいに
     私のどこがいけないの
     それともあの人が変わったの
     残されてしまったの 雨降る町に
     悲しみの眼の中を あの人が逃げる
     あなたならどうする あなたならどうする
     泣くの歩くの死んじゃうの
     あなたなら あなたなら       ♪
       (作詞:なかにし礼)

そう、いしだあゆみの「あなたならどうする」であった。
脇道にそれ続けてきたから曲の説明はもう控える。
それより豚耳が常温に戻りつつあった。
うむ、うむ、酢の効いたマスタードとの相性はよろしい。
BGMが百恵の「プレイバック Part 2」に替わった。

冷たい豚耳だけではものたりなさを感じる。
そこでもう一品。
当店のスペシャリテ、担々麺を食べきる自信はないし、
ちょいとばかり心惹かれた豚しゃぶしゃぶ麺、
蟹3匹使用の蟹炒飯、それらとて担々麺同様に食べきれまい。

やはり軽めの点心に戻ろう。
面白くも何ともないが無難な焼き餃子を選ぶ。
これならよしんばハズしてもダメージが少ないし、
不味い餃子にはあまり出会うこともない。

時間がしばらく経過して餃子が焼き上がった。
おや? 意に反して皿には棒状の物体が数本。
餃子は半月状が一般的だが春巻と見まがうほどである。
まっ、味に変わりがあるじゃナシ、
そのまま何も付けずにいただいた。

ふと思って熱い餃子の上に半分残った豚耳を並べてやる。
みるみるうちに温まった耳が半透明になってきた。
おう、おう、ヌクいほうが断然いい。
心なしか紹興酒までその旨味を増している。

BGMは小柳ルミ子の「冬の停車場」。
そして八神純子の「思い出は美しすぎて」。
どちらも好きな曲である。
どうでもいいが女性シンガーばかりだネ。

紹興酒を飲み干し、今日の日を振り返り、
そろそろ幕引きとするかの。
お勘定をお願いして夜の帳(とばり)が下りた町へ。
思えばずいぶん歩いたもんだ。

翌日曜は何も予定ナシ。
デスクに積み上がった書籍の数々を
片っ端から読むことにしようっと―。
長々とお読みいただき、ありがとさんにござんす。

=おしまい= 

「毛家麺店」
 東京都文京区千駄木3-34-7
 03-3823-0039