2017年2月1日水曜日

第1549話 素晴らしき土曜日 (その3)

明るい陽射しのもと、徘徊しているのは上野桜木界隈。
やがて店舗も民家も絶え、
通りすがったのは東京芸術大学正門前だ。
おりしも学内では芸術祭みたいな催し物が開催中。
よって人の出入りが普段より激しい。
人影まばらであったなら、すんなり門を通過できまい。
もしもし・・・守衛のオジさんに誰何(すいか)されちゃいそうだ。

あれは数年前。
すぐ近くのJR鶯谷駅南口から芸大方面に歩きだしただけで
若いアホ警官に職質を食らった不快な経験がある。
品行方正を貫いて生きてきた善良な市民を自覚するJ.C.、
にもかかわらずバカお巡りの目には不審人物として映ったらしい。
やれやれの、やれであった。

東京芸大の創立は1945年。
当時の官立専門学校、
東京美術学校と東京音楽学校が統合されて現在に至る。
学内に入って右手が美術学部、左手が音楽学部に二分されている。

右にゆくと、目の前の学生食堂が大賑わい。
テラスにまで人があふれている。
時刻は13時過ぎで
ランチタイムのピークは越えたものの、
土曜のせいか、あるいは催事のおかげか
次から次へとハングリー・ピープルが押し寄せてくる。

かく言うJ.C.にも空腹感が襲ってきていた。
しかも食堂入口には
ビールの空き瓶を収めたラックが山積みである。
おう、おう、ビールが飲めるのかい?
あの東大だって多々ある学食のうち、
ビールを出すのは本学の「銀杏メトロ食堂」のみ。
それも16時以降に限定されている。

さすがに芸大だなァ。
適度の飲酒は芸術家にひらめきをもたらすもんねェ。
食事に期待はできずとも、ビールが飲めれば文句はない。
歓び勇んでご入館と相成った。
ひょっとしたら肩で風切ってたかもネ?

美術学部の学食は「大浦食堂」といい、
歴史ある独立営業の店舗であった。
ありゃりゃ、なんだよこの行列!
長蛇のラインはキャッシャーへと続いている。
少々メゲながらもビールのためだ、多少の我慢は乗り越えよう。
自分で自分の説得に成功。

わがオアシス、あるいは愛の泉、
茶色のボトルを探してみたものの、ぜんぜん見つからない。
食事中の群衆を見渡しても誰一人として飲んでる客などいない。
いったい、どうなってんだ? 責任者出て来い!

=つづく=