2018年2月12日月曜日

第1807話 フラれぐせがついちゃいまして・・・ (その2)

三重県・的矢湾産の極上かきを
冬場のウリにしているビヤレストラン「レバンテ」。
十数年ぶりに再会したS口クンと
卓を挟んで生ビールを飲み始めた。

訊いておきたいことは間髪入れずに訊く性分、
さっそく鼻の頭に残った傷痕の由来を質すと、
何のこたあない、木工細工の作業中に
轆轤(ろくろ)から木片が飛んできたんだとー。
とにかく喧嘩(でいり)でなくてよかった。

さて、的矢の生がきをいただくとしますかの。
1人3個づつで計半ダース、注文に及ぶと、
ウエイターのオニイさんの口から
思いもよらぬセリフが飛び出した。

「すみません、生がきのご提供は
 12月いっぱいで終了させていただきました」―
あっけにとられて言葉がとっさに浮かばない。
いえ、口には出さぬが胸の奥で叫んでいたネ。
(アン〇ァッキング・ビリーヴァブル!)と。

三月末ならまだしもシーズンたけなわの年末に
メニューから外す暴挙を看過すること能わじ。
年を越えてこれからプックリ太ってくる矢先に
何てことしてくれるのサ。

代わりに数年前から都内に侵食してきた、
浜焼きなんぞを推奨されても
振り上げた拳は宙に浮いたまま。
ここで素直に引き下がるJ.C.ではない。
執拗に食い下がったネ。

「自己責任でけっこうだから
 何とか生で食べさせてくれとシェフに交渉してみて」―
懇願すると、困惑に眉を寄せたオニイさん、
仕方なく厨房に向かう。
無言のうしろ姿なれど、
おそらく彼も胸の奥でつぶやいていたろう。
(やれやれ)と。

結局は薬局、返された答えはノー!でありました。
代替品の浜焼きは火の通し浅く、旨みじゅうぶんながら
生を求めて来店した身には隔靴掻痒の感否めず。
不完全燃焼がくすぶり続ける。

まったくもってこのところ、
何処へ行ってもフラれているヨ。
中でも的矢の生がきにフラれた痛手は
ほかとは比べようがないほど大きいものがあった。

=つづく=