2018年3月6日火曜日

第1821話 三匹のおっさん (その3)

江東区は木場の「夢乃家」で飲んでいる。
まぐろぶつも悪くはないが
1軒目の門仲「ますらお」のかつお刺しには及ばない。
むしろアラ大根がよかった。
アッサリ味の塩仕立てが効を奏している。

18時過ぎにはほぼ満席となった。
うしろの小上がりを振り返ると、
座敷がずいぶん低い位置にあって
上から目線で客たちを見下ろす感じ。
こりゃ小上がりじゃなくって小下がりだネ。

2杯目は一番搾りの黒小瓶。
日本酒に移行すると、おっさん三匹、
枕を並べて討ち死になりかねないので
自重した次第なり。

いつの間にか店の中が中国・北京の大気汚染状態。
焼きとんのケムリが充満してきた。
これはかなわん。
料理の追加もないまま、勘定は3人で5千円とちょっと。
まっ、そんなものでしょう。

木場方面に大門通りを戻るのは
抵抗があるからそのまま北上する。
といっても吉原まで行く気はさらさらない。
頭の中には1軒の食堂が浮かんでいた。
歩くにはちょいとばかり距離があるけどネ。

10分も行くと案の定、
一人のおっさんがブウブウ言い出した。
「いったい何処まで歩かせんの?」
「もうちょい、もうちょい」
なだめすかしの一手である。

そうこうするうち、もう一人は立小便ときたもんだ。
橋の上からじゃなくて植込みの陰だから
まっ、いいか・・・いや、よくはないわな。
チャリンコのお廻りが通らなくてよかったヨ。
やれやれ。

おっさんの、しかもヨッパライの脚だから
30分はゆうに歩いたろう。
やって来たのは白河3丁目。
清洲橋通りと三ツ目通りの交差点、
カドに位置する「実用洋食 七福」である。

「何なのコレ? 食堂じゃんか!」―
ブウブウおっさんが口をとんがらかした。
(うっせい、黙って入れ!)
口には出さず、背中を押した。
いや、正しくは背中を押しこくった。

=つづく=

「夢乃家」
 東京都江東区5-16-2
 03-3644-2402