2018年3月12日月曜日

第1825話 江戸のはずれの江戸川区 (その3)

創業六十有余年、よくぞ続けてこれましたの、
大衆酒場「伊勢周」にて名代の酎ハイをあおっている。
L字のカウンターは客が鈴なりとなってきた。
どの駅からも遠いからみな地元のなじみ客だろう。

面白いのはこの店、3人以上の訪れには
カウンターの中にも客を引き入れて
にわかテーブルの差し向かいで対応すること。
よそではめったに見られない光景である。

酎ハイのお替わりに乗じて料理を追加する。
ハゼの天ぷらとスパゲッティ・グラタンをお願いした。
たぶん江戸前だろう、
小ぶりのハゼはカラリと揚がっている。
江戸湾の小魚は小ぶりに如くはない。
キスとメゴチの中間的食感が歯に舌に心地よい。 
 
都内有数の歴史を誇る酒場てスパゲッティ、
しかもグラティネしちゃうってんだから
客は意表を衝かれる。
月並みな料理が並びがちな大衆酒場で
こういうのに出会うと、つい頼みたくなる。
舌先に変化がほしくなるのだ。
まっ、あまり美味しいもんではなかったがネ。

幹線道路を離れ、
住宅街に迷い混んで3軒目を目指した。
こちらも地域を代表する酒場「カネス」だ。
店の内外に昭和の痕が著しい。
煮込まれたおでん種みたいな趣がある。

酎ハイの酔いが回ってきたが
相方はケロッとしている。
にこやかな笑みを絶やすことがない。
いったいアンタ、どれだけ飲めるんだ!
 

ここでは瓶ビールを所望した。
「伊勢周」でスパゲッティ・グラタンをシェアしたが
腹八分目までは至らず、六分目あたりかな。
飲むとあまり食べないJ.C.ながら
ストマックのキャパにまだ若干の余裕がある。
 
生モノはもう欲しくないし、
当店の煮込みは以前に試して
口に合わなかったことを記憶している。
 
そういえば煮込みの鍋の前に陣取っていた、
婆ちゃんはどこへ行ったのだろう。
かなりのお歳とお見受けしたからすでに隠居、
いや、ひょっとしたら鬼籍に入られたかもしれない。
おっと、めったなことを口走るもんじゃないネ。
 

=つづく=