2018年4月4日水曜日

第1842話 ひとり墓場で 観る花は (その1)

  ♪   ひとり酒場で 飲む酒は
     別れ涙の 味がする
     飲んで棄てたい 面影が
     飲めばグラスに また浮かぶ  ♪
        (作詞:石本美由起)

美空ひばりの「悲しい酒」は1966年6月のリリース。
数々のエピソードに事欠かぬ名曲は
これだけを語っても2~3話はこなせるくらいだが
それはまた別の機会にゆずるとしよう。

ただ、カラオケなどなかった時代に
亡き母が口ずさんでいたのを思い出す。
だいぶあとになって知ったことながら
PTAの宴会などでは、よく歌っていたらしい。

  ♪   一人酒場で 飲む酒に
     かえらぬ昔が なつかしい
     泣いて 泣いてみたって 
     なんになる
     今じゃ山谷が ふるさとよ ♪
        (作詞:岡林信康)

フォークシンガー、岡林信康の「山谷ブルース」は
1968年9月のリリース。
ひばりの「悲しい酒」から遅れること2年あまり。
時代は過激な学生運動の真っただ中だった。

歌詞はその2番である。
出だしのフレーズが「悲しい酒」にそっくりで
岡林が石本美由起の元詞に
インスパイアーされたことは明らかだ。

面白いのは後年、ひばりと岡林は知遇を得て
ともにグラスを合わせていたこと。
殊に新宿のゴールデン街では
二人の姿がたびたび目撃されている。

 ♪ ふたり酒場で 飲む酒は ♪

いったいどんな味がしたことやら・・・
うれし涙の味がしたのかもしれないネ。

さて、その日のわが身。
東京の桜が満開と報道された数日後。
散り急ぐ花びらがほほをかすめる午後だった。
独りで訪れたのは墓場。
そう、墓地、霊園ですな。
目的は墓参ではなく、花見でありました。

=つづく=