2018年4月26日木曜日

第1858話 くじベコとハゼ天 (その1)

電車1本乗り遅れて愛しい店に先立たれた夕べ。
いまわの際に間に合わず、と言うか、
消えゆくことなど露ほども知らぬ夕べ。
代わりに訪れたのは足立区・五反野の「幸楽」である。

同じ足立区の一大ターミナル駅・北千住にも
同名の酒場があるが別段つながりはないらしい。
「幸楽」と聞くと第一感は
TBSドラマの「渡る世間は鬼ばかり」の中華屋だネ。

駅そばのふれあい通り商店街に店はある。
入店したら目の前の水槽が出迎えてくれた。
水の中にはサザエが十数個、ほかには何もいない。
サザエの刺身はここの名物なのである。

スーパードライの大瓶を飲りながら考える。
サザエねェ・・・。
今朝、朝日新聞で昔の「サザエさん」を読んだばかり。
これも何かの縁、サザエのつぼ焼きでもいただくか。
そう思ったとき、本日のおすすめを記したボードに
鯨のベーコンを見とめた。

子どもの頃は嫌いだった、くじベコは大人になって
要するに酒を飲むようになって好きになった。
昔は豚のベーコンが食べたいなと思っていたのにネ。
よお~し、まずは鯨、それからサザエでいいだろう。

あっと言う間にくじベコ登場。
お運びの女の子は高校生かとみまごうばかりに幼いが
キビキビとした動きにムダなく、
言葉のやりとりにもソツがない。
バイトなんだろうが、なかなかのプロフェッショナルだ。

ベーコンはけっこうな量があった。
レモンのスライス、きざみ小ねぎ、練り辛子が添えられている。
おっと、鯨の下にはワカメが敷き詰められているじゃないか。
ん? ワカメ?
即座に判断しやしたネ。
これでいいじゃん、何もサザエを頼むこたあないや。
妹のワカメで手を打とう、あいや、舌鼓を打とう。

鯨はもちろん、ワカメも完食。
お次のつまみの物色である。
老眼鏡で壁の品書きを見上げた。

山うど酢味噌、小肌酢、キス天、うな玉・・・。
生ほたるいかがあるじゃないか。
ほたるいかはボイルだったけれど、前夜に食べてるし・・・。
おや? 日光唐揚げっていったい何だろう?

=つづく=