2018年5月4日金曜日

第1864話 「三州屋」転じてブラッスリー (その2)

神田は日銀通りの脇道にある「ブラッスリー・ザン」。
そのカウンターで
プーレ・ロティの匂いに食欲をかき立てられていた。
匂いの元は何だ!ってか?
使いなれない仏語でごめんこうむりやすが
ローストチキンにごさんす。

思い起こすのはブラッスリーの発祥地、
フランス北西部のアルザス・ロレーヌ。
地方で最大の都市はシュトラスブールだ。
J.C.がこの街を訪れたのは1974年の夏。
夕刻にはルクセンブルグへ向かう列車に
乗り込む予定の昼下がりだった。

川のほとりで草の上の昼食とシャレこんだ。
目の前に拡げたのは軽めの赤ワインとバゲット。
そして1羽のプーレ・ロティだった。
いえ、正しくはプッサン・ロティ。
プッサンは雛鳥のことである。
とてもじゃないが親鳥1羽は食べ切れないからネ。

そんなことを思い出しながら神田で注文したのは
前菜代わりのキャロット・ラペ、豆サラダ。
加えてメインのプーレを半羽(1200円)。
ほとんどの客はこれを目当てに集まって来る。

白ワインに移行、ボトルでなくグラスでお願いした。
1杯目はホブノブのシャルドネ。
キャロットよりも豆によく合う。
続いてアンディアンはソーヴィニヨン・ブラン。

焼き上がったプーレが運ばれた。
総じてチキンは好きだが中でもロティは大好物。
日本式の焼き鳥はあまり好まない。
正肉・ねぎ間に魅力を感じず、
それならハツ・レバー・背肝など臓物に疾る。

胸肉、いわゆるアバラの部分を二つに分けてかじりつく。
うむ、ウム、旨い、ウマい。
これが正しいチキンの味わい方だと思う。
それに昨今は東京の焼き鳥屋がずいぶんと高級化した。
江戸前鮨と同じ道を歩むのかと思うとゾッとする。

赤ワインに切り替え、ルーマニアのラヴィというのを―。
アバラの周り、特に背肝との相性がよろしい。
赤の2杯目、テンプラニーリョのヴァルサンソも悪くない。
当店のグラスワインの品揃えは
ビールのそれに反してまことにけっこうなり。

プーレはテイクアウトも可能。
近くにあればちょくちょく持ち帰るのになァ・・・。
骨付きもも肉にかぶりつきながら
そう思った次第なり。

「ブラッシュリー・ザン」
 東京都千代田区鍛冶町1-7-1
 03-3251-2233