2018年6月28日木曜日

第1903話 神田なきあと六本木 (その1)

この四月、なじみの「三州屋 神田駅前店」に
突然閉業されて途方にくれたJ.C.。
それではと、よすがを求めて
六本木店の訪問を心に決めたものの、
いたずらに2ヶ月の時を費やしてしまった。

ひょんなことから酒場で出逢い、
その後、酌交を続けているFサン。
ある夜の飲み会に彼が会社の後輩を連れてきた。
このSクンがJ.C.の高校の後輩と判明。
以来、何度か酒を酌み交わす仲となる。

此度、五十路を歩むSクンが転職するというので
ささやかな送別会を開く運びとなった。
実はFサン、「三州屋 六本木店」が
移転する前の旧店舗で常連だったそうな。
東京ミッドタウンそばの新店舗は未訪につき、
ぜひ、そこで飲ろうとなった次第だ。

六本木店は以前、ひいきにした鮨屋「兼定」のすぐ隣り。
その並びの突端にはもっと以前、
ひいきにしたワインハウス「ミスター・スタンプス」もある。
ともに数十年を超えて盛業中でまことに歓ばしい限りなり。

当日の仕掛けはちょいと早めの16時。
入口は開いていたものの、窓際はシャッターが下りていた。
昼からの通し営業と早合点していたのは間違いで
土日祝は16時オープンの由である。
まっ、往年のセブンイレブンのキャッチじゃないが
「開いててよかった!」

一部の例外はあるにせよ、
都内に散在する「三州屋」は基本、
ビールがサッポロ黒ラベル(または赤星も)、
清酒は白鶴と決まっている。

お運びのオバちゃんに
「お待ちになります?」―訊かれる。
「いや、大瓶ください、それと生たら子も」―応える。
背にした窓のシャッターがスルスルと上がった。

それにしても旧店とは似ても似つかぬ新店である。
小ぢんまりという形容がピッタリだ。
カウンター席はない。
お運びは中年の女性が2人。
厨房に店主の影が見える。

たら子は好物中の好物で、家ではもっぱら生食。
日本酒を振りかけて酒のつまみとするのだ。
外では常にチョイ焼きをお願いするのだが・・・。

=つづく=